美味しい。
もしあの時枝豆をもっと早くに収穫していたら、あの枝豆を食べられたかもしれない。
それから何年か経ち、中学生になった私は晩御飯に枝豆のスープが出てきたことであの時の枝豆のことをふと思い出す。
母に「私が小学生の頃に枝豆育ててたの覚えてる?」と聞いてみると、母は「もちろん覚えているよ」と返す。
しばらくすると、母は何か言いたげな表情だった。
「そろそろ、話してもいいかもしれないね」
「これは、近所の人から聞いた話なんだけどね」
母はぽつりぽつりと話し出す。
私が枝豆を育てている小学生の頃に時は遡る。
あの頃の私は枝豆に夢中になっていたことで、周囲でちょっとした異変が起きていたことには気づいていなかったのだが、私の枝豆を恨めしそうに睨んでいるある人物が居たそうだ。
そして、その人物を哀れな目で眺めていた人物もいた。
「あの子の枝豆畑なんてどうせ芽なんて出ないくせに」
「なんで芽なんて出るのよ」
「毎日あんなにせっせと世話なんかしちゃって、馬鹿みたい」
「なんでみんなあの子のこと応援してるのよ」
「枝豆なんてそのうち枯れるんだから」
「なんで枯れないのよ」
「枯れちゃえばいいのに」
「そうだ、天気予報で台風が来るって言ってた」
「台風のせいにして枝豆を引っこ抜いて捨てちゃおう」
台風が迫りつつある薄暗い夕方、枝豆を恨みがましい顔つきで睨んでいた人物はどさくさに紛れて枝豆を全部引っこ抜いて近くの川に流してしまったのだという。
そして、その暴挙を何度も辞めさせようとしていた人物は近所のお寺の住職さんだった。
住職さんは子供の頃から霊感のある人物であり、他人の悪意を敏感に感じとることが出来る人だと聞いたことがあった。
おそらくは私の枝豆を狙っていた人物の悪意に気付いたのだろう。
嫌な気配を感じると私の家の周辺を見張るかのように、畑に嫌がらせをしないようにしてくれていたが、さすがに台風の日だけはお寺のことも心配だったことから、犯人の犯行を止めることが出来なかったそうだ。
























ドライブ中にコンビニでよく枝豆を買います。普段ポイ捨てなどは絶対にしないのですが枝豆の殻だけは捨てても良いと何故か思ってポイ捨てしてます。