それから一回だけ軽く深呼吸をして襖の取っ手に手を掛けた。
そして肩越しに振り向き緊張している彼女の顔を見てニッコリ微笑むと、一気にガラリと開ける。
恐る恐る浅川が覗きこむが、押入れの上段には寝具が積み重なっているだけで、下段には何もないようだ。
その時だ。
下段の奥の暗闇から何かがさがさという音がするので覗き込むと、突然何かが飛び出してきた。
「うわ!」
驚いた彼は思わず後退りする。
「大丈夫!?」
洋子が心配げに声をかける。
浅川はさっき飛び出した奴を捜して、素早く視線を移動していく。
それから間もなく視界に入ったそいつは、和室の片隅に立っていた。
━いたち?
猿?
いや違う。
思いながら今度は改めて見る、そしてゾッとした。
そいつは裸の人間だった。
背丈は30センチくらいだろうか?
しかも顔は白髪混じりの【おじさん】なのだが、体はスラリと細身の人形のようにしていて顔が体に対してアンバランスにでかい。
「え!田中さん?」
浅川の肩越しから洋子が驚いた様子で呟いた。
【おじさん】は怯えた表情で呆然と見守る俺と洋子の顔を交互に見ると、「アタシ、バービーヨ、、アタシ、バービーヨ、、」と声を出しながらチョコチョコ走りだす。
そして和室とリビングを真っ直ぐ駆け抜け、玄関に続く廊下の方に向かって消えていった。
【了】
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こわい
笑ったwww
コメントありがとうございます
─ねこじろう
きも、、、