自殺という言葉に私は目を大きく見開いたと同時に血の気が引いていた。
「悪い男に引っかかったらしくて。妊娠して堕したんだって。それから病んで学校にも来なくなってさ。……首吊りらしい」
無意識にA先輩の姿が浮かぶと、写真の中の女性の姿が変化する。
こちらを睨みつけるように表情が変わり、女性が見る見るうちにあの時にA先輩の後ろにおぶさっていた姿へと変化していった。
穴の空いたような黒い目が私を見ている。
悲鳴をあげた私はアルバムを投げ出していた。
そのあまりの狼狽えた様子に夫は「どうした!?」と私に声をかけた。
「──あぁ、A先輩ね」
私は居ても立っても居られずに当時飲み会に参加し、A先輩に熱をあげていた友人へと連絡を取った。
「連絡とか今もしてたりする?」
「ううん、全然。だってあの人、嫌な噂あってさ。それ聞いて一気に熱が冷めたの」
「……噂って?」
じっとりとした汗を感じた。
「女の子を取っ替え引っ替えしてたって他の子から聞いて。妊娠して堕した子も何人かいたみたいよ」
私に中にうっすらとあった彼と彼女の繋がり。
それがはっきりと見えるようで。
「今、どうしているんだろうね、A先輩」
「なんか二、三年前に自転車事故で大怪我したんだって。そのせいで半身不随になったみたいで……。それで寝たきりになってついに頭の方もおかしくなっちゃったみたい。変なこと言うんだって。ずうっと」
写真の中で笑っていた彼女が悍ましい表情に見えた時、憎しみがはっきりと見え、空虚な穴のような目に見えた時、耐え難い苦痛と悲しみを感じたのだ。
「──女がいつもそばにいるって」
あのアルバムはその日以来見ていない。
怖くて見られない。もう一度彼女の目を見たら、私もおかしくなってしまいそうで。
A先輩は、今も病院にいるんだろうか。それはもはや知る由もない。
でも、きっと彼女は今も──……。






















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