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不思議体験

ないものさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

実験
短編 2025/04/04 15:50 2,767view
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「単語を読んだあと、意味のない質問をされることで、脳が勝手に関連づけちゃうんですって。だから、妙な違和感を覚える。まあ、心理的なトリックですよね」

聞いてもいないのに、後輩は淡々と語り続ける。
またいつものが始まったな……と思いつつも、仕方なく問いかける。

「確かに気味は悪いけど、そんな怖いって感じはしなかったな。それで、この実験がどうしたの?」

「実は、この実験を繰り返していると、ある奇妙なことが起こるんです」

後輩は、いつになく真剣な表情で語りはじめた。

「同じ人に、何度も同じ実験を繰り返すと……最後の質問、『後ろにあるもの』の答えが、どんどん歪んでいくみたいなんですよ」

「……歪む?」

「ええ。何十人もの参加者を集めて実験を行ったらしいんですけど……ほとんどの被験者は、最後の質問にたどり着くたびに“違うもの”を答えるんです。それも、どんどん抽象的になっていく」

「というと?」

「最初は壁とか棚とか、実際にあるであろうものを答えるんです。でも、繰り返しているうちに、“空気“とか、“気配“とかになっていく。そして……」

後輩は、微笑みながら続ける。

「最後はみんな“誰かがいる”って答えるんです」

沈黙が落ちる。

「一周目では、“誰かがいる”なんて答える人は一人もいませんでした。でも、二周、三周と繰り返すうちに、参加者のうち数名が、“何かの気配“とか“誰かがいる気がする”とか、そんなふうに答えはじめる。そして、最終的にはほとんどの人が、“絶対誰かがいる“と断定するようになるんです」

「……作り話だよね?」

「もちろん作り話だと思いますよ。そもそも、『あなたの後ろにあるものは何ですか?』って聞いているのに、“気配“とか“誰か“とか、モノじゃない抽象的なことを答えるのが不自然ですしね」

後輩は、薄く笑みを浮かべながらわたしに問いかける。

「でもせっかくなので、試してみましょっか」

「……?」

「ほら、1周目はさっきやったじゃないですか。なので2週目を試してみましょうよ。じゃあ読み上げていきますよ?白い部屋、軋む階段、ぐちゃぐちゃの笑顔……」

わたしは少し焦って、後輩の読み上げを静止する。

「いや怖いって!やめろよ!」

「ははは、冗談ですよ。先輩も怖がりだなぁ」

その場の空気が笑いに包まれた。
誤魔化すことができて、少し安堵したのを覚えている。
一息ついたところで、互いにまだまだ終わりの見えない仕事の続きに戻ることにした。

あのとき、背後に気配を感じたことは、まだ後輩には伝えていない。

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コメント(2)
  • おもしろい

    2025/04/26/13:15
  • こわい

    2025/05/19/15:28

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