そうして衣装箱の中身を改めると、そこには手鏡と一体の人形が折り重なっていた。
手鏡は酷く曇っていて使い物にならないだろう。
では人形はどうか。
その人形は驚くほど精巧に作られている。
身に纏っている着物は恐らく本物と同じ生地だ。
髪の毛はまるで生きた人間のように艶がある。
人形としては珍しく瞳は閉じていたが、肌の質感も実物と遜色がない。
彼がそんなことを考えていると、サトウも同じことを思ったのか、人形を手に取って眺めている。
「今にも目を覚ましそうなくらい良くできているな」
サトウは持っていた人形を置くと、今度は手鏡を手に取って頭上へかざした。
何度か角度を変えながら「これは駄目だな。映りゃしない」と呟いたのだが、突然「うわ」と叫んで手鏡を放り投げると、先ほど壊した鍵に当たって割れてしまった。
サトウは肩で息をしながら割れた手鏡を一心に見つめている。
どうしたのだろうか。
しばらくして、サトウは「見たか?」と尋ねてきたので、彼は「何も」と答えた。
「老婆が映り込んだ。気のせいじゃない」
そんな馬鹿な。
彼には到底信じることができない。
しかし、ただでさえ曇っている鏡を見間違うことなどあるだろうか。
サトウは息を荒げながら「これはとんでもない物だ。今すぐ戻そう」と言うので、彼も言われるがままに手伝うしかなかった。
割れた手鏡の破片を拾い集め、壊した鍵も全て衣装箱に放り込んだ。
そして衣装箱の蓋を閉めようとした時、人形の違和感に気がついた。
目が開いている。
それは不自然なほど大きく見開かれていた。
彼が驚きの叫びを発するよりも早くサトウが衣装箱を奪い取ると、掘り起こした穴に戻して重機で土を被せていく。
彼は、ただ唖然としていることしか出来なかった。
衣装箱が埋め終わると、サトウは彼のもとへやってきた。
「このことは誰にも口外するな」
彼も言うつもりはなかったし、言ったところで信じてもらえないだろう。
それから二人は何事もなかったかのように、各々の作業に専念したという。
























今日いちばんよかった
映像化してほしい
引き込まれました。
引き込まれました
よかった。怪異の実態は直接そこに現れる事も無く、けど情景はしっかり目に浮かんで怖かった。
地味に怖い
その婆さん何者だよ
強すぎじゃね?
やっぱり怪異はこのくらいの書き方の方が映えるね
超常現象かどうか微妙なラインでとどめておくのがベスト
老婆がどんな呪いをかけたのかを明確には言わないのも良かった
そこで神主が人形を使ったどうたらこうたらの呪いですと説明してたら正直萎えてた
この作品を正当に判断できる評価者がいることを切に願う。今まで数々の怪談を目にしてきたが、この作品はクオリティが違う。文学作品としての気品すら感じる。
これ読むと他の話が幼稚に見える
箱に入った人形と鏡が、「後遺症ラジオ」の〃おぐしさま〃で再生されてゾッとした
この話は有り得ない
あの時代だったらこの婆さんは呪いをかける前に居なくなっているはずだから
言い方変だけど、よく出来てるなぁと思った
だからタイトルの「向かい合わせの怪異」というのにも意味があると思うんだけど、考えてもわからない。何が向かい合わせなのかわかる人いる?
もう小説家デビューしていいクオリティ。
引き込まれた。
読み応えありました。
過去似たような怪談を目にしましたが、クオリティの高さではトップクラスですね。
難をいえば、タイトルで損をしていると思います。
私の想像力が不足していることもありますが、どなたかも指摘していたとおり、「向かい合せの怪異」とした理由と根拠がいまいちわかりにくい点でしょうか。
本文を読み進むうちに、なんというタイトルだったかすら忘れてしまうほど優れたストーリ展開なので、単純にもったいないなぁと思った次第です。
サトウと友人の幻覚怖っ
あもすっごぃ。
今まで見た中で1番文章力が高い。プロの小説家かと思いました。
恐怖は快感だが、ビックリするのは不快。
文章ホラーのいい所は映像ホラーみたいにデカい音と視覚効果でビックリさせて満足する駄作が無い所だな
いい作品でした。