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呪い・祟り

漁師スープさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

祈り
短編 2025/03/14 16:34 1,784view

いつも通りにフランクに接してきた。

店長は元不良だと言っていたから

「家族」に嫌な思い出があるのかもしれない。

そう察した私はこれ以降

あの話を店長にすることは止めた。

しかし、あの時の店長の意外な反応が気になっていた私は

先輩に尋ねてみることにした。

先輩は店長の過去を教えてくれた。

店長は不良時代、改造車にハマっていたらしい。

真夜中に人気の少ない道路で

仲間と暴走行為に一晩中いそしむのが

毎日の過ごし方だったそうだ。

ある夜も店長はいつものように暴走に明け暮れていた。

朝方になり、仲間と解散して一人になった後

改造したスポーツカーに乗っていつも通りの道を帰っていた。

郊外にある暴走スポットからしばらく走り続けて

やっと地元の薬局の前の狭い交差点を通り過ぎた。

雨も土砂降りな上、店長は一晩中の運転で疲れていて

今が何時なのかもよく分からなかったそうだ。

そこからしばらく走り、踏切に続く広い道に出た時

他の車の少なさについ慢心し、いつもの暴走癖が出てしまった。

シフトを切り替え、雨で前もろくに見えないままスピードを70キロ・80キロとどんどん加速させていく。

路面を滑る自分の車のキュルキュルという音と

無力なブレーキのキキキ…という音を一瞬だけ聞き

目の前の小豆色の軽自動車にぶつかるその瞬間で

店長の記憶は途切れてしまったらしい。

後の裁判でこの事故の詳細を改めて聞かされた時に

初めて店長は自らの過ちを実感したそうだ。

電車も巻き込み、2名が被害者となった過失運転致死の前科は

店長を更生させるのに十分過ぎるほどの罰の重さだった。

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