そこにいたのは——
人の形をした、“なにか” だった。
顔がない。腕が異様に長い。爪が黒く変色し、ゆっくりと田中の首に伸びてくる。
田中は悲鳴を上げ、電車が次の駅に滑り込んだ瞬間、転がるようにホームに飛び出した。
——ガタン。
振り返ると、電車の中にはもう誰もいなかった。
しかし、最後尾の窓に——
さっきの“それ”が張り付いて、口だけを大きく開け、こう言っていた。
「次は……おまえの家にいくよ。」
~幽霊の見る世界~
私はずっと、この電車にいる。
あの夜、線路に投げ出され、冷たい鉄の下敷きになった時から、どれだけの時間が経っただろう。
もう痛みは感じない。だけど、寂しさだけが消えない。
だから、私は探している。
——ここに、来るべき誰かを。
***
今夜の電車も、静かだ。
人間たちは皆、疲れた顔で座っている。その中のひとり、田中という男が、私に気づいた。
最初はただの違和感だったのだろう。彼は窓に映る自分の顔をぼんやりと見ていた。
そして、私がいることに気がついた。
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コワすぎ!!
怖いっていうか、うんお幸せに
泣きそう
泣けるねー