入ってはいけない竹林
投稿者:笹々 (1)
「それからだったかな。竹林を柵で囲ってね、中に入れないようにしたんだ。今も定期的に偉い神主さん呼んでお祓いしてるみたいだが……多分、あそこはもう駄目だろなあ」
「そんなことがあったんだ……」
俺は安易な気持ちであの竹林に立ち入ったことを後悔していた。
慶太と晃が体調を崩したとはいえ、4人とも無事に戻ってこれたのは奇跡だったのだ。
しかし、続く祖父の話を聞いて俺は絶望した。
「夫婦の住んでた家も子供が見つかってすぐに壊された。あの竹林には今はもう家はないが、夫婦の怨念は残っているのかもしれんな」
……家が壊された?今はもう家はない?
「……その夫婦が住んでた家以外の建物は無かったの?」
「無かったな。一度入ったことがあるが、建物は夫婦の家だけだったなあ」
じゃああの時、俺達が見たのは……
それから数日後、光一からまた電話があった。
「今からうちに来れない?ちょっと見てもらいたいものがあるんだ」
家に行くと、光一が写真の束をテーブルに置いた。
「これ何の写真?」
「この間竹林で撮ったやつだよ」
そういえば、すっかり忘れていたが光一はカメラを持っていた。
「現像していいものか悩んだけど……」
光一が撮った写真を一枚ずつ見る。
竹林の写真は光の差し込み具合といいとても綺麗に撮れていたが、何枚か見ていくとおかしなことに気がついた。
「これ……こんなのいたっけ」
竹林の竹の間から、小さな子供のような顔がいくつも覗いている。
光の加減でそのように見えているのかと思ったが、光一曰く「現像してしばらく経ってからこの顔が浮き上がってきた」らしい。
俺は祖父から聞いた話を光一にも教えた。
光一は俺達が見たあの家がとっくになくなっていたものだと知ると絶句した。
「でも言われてみれば確かに、あの竹林の中に建物があるなんて今まで誰にも言われたことなかったよな」
光一は何か考え込んでいるようだった。
「光一お前、ひとりでまたあそこに行こうとか考えてないよな?」
俺の問いに、光一は図星を突かれたようにハハッと笑った。
長いようで短い夏休みが終わった。
慶太と晃のことが心配だったが、2人ともすっかり元気になって登校してきた。
ただ、不思議なことに2人とも竹林に入った時の記憶を失っているようだった。
(まあ無理に思い出させてもあれだしな……)
ふと、あることに気づく。光一が来ていない。
俺「あれ?光一は休み?」
慶太「さあ……聞いてないな」
晃「夏休み終わったの忘れてるとか?」
なんだか嫌な予感がした。
実はあれから毎日、光一とは電話をしていた。
昨日も電話で「学校で会うの楽しみだな」と話したばかりだった。
体調が悪いなら連絡があるはずだが、どうやら学校のほうにも連絡は来ていないらしい。
俺達は放課後に光一の家に行ってみることにした。
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