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呪い・祟り

笹々さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

入ってはいけない竹林
長編 2025/02/02 00:11 428view

光一の家は何度チャイムを鳴らしても誰も出なかった。
「あのー!誰かー!」
晃がドアをドンドンと叩き始めた。
すると、隣の家のドアがガチャリと開いた。
「そこの人、引っ越しちゃったからもういないよ」
40代くらいの女性が迷惑そうな顔で言った。
「え?引っ越した?え?……」
「そうだよ。何日か前かな。急に引っ越しのトラックみたいなのが来て、みんな逃げるようにどこか行っちゃったよ。噂だと、息子さんが病気になったとかなんとか」
女性の話によると、ぐったりした光一をお母さんが抱き抱えてタクシーに乗り込むのを見た人がいるらしい。
「そんなことって……」
俺達は顔を見合わせた。
おかしい、昨日も電話したのに。

学校で会おうと言っていたのに。

当然、光一一家が急に居なくなったことについては学校でも問題になった。
しかし、どういうわけか校長の一存で光一が他校に転校したということで話が片付いたらしい。
しばらくはクラス内でも光一のことで根も葉もない噂話が流れていたが、冬休みを迎える頃にはそんな話も聞かなくなった。

その後は特に何も起こらなかった。
慶太と晃は相変わらず竹林での記憶を失くしているし、俺もわざわざ掘り起こす気にはならなかった。何より、光一がいなくなったことが偶然ではない気がして、あの竹林のことを考えたくなかったのだ。

そうして長い年月が経ち、俺も社会人になって故郷を離れた。
竹林での出来事は忘れたくても忘れることができなかったが、よくよく考えてみれば俺はあそこで怖い思いはしていない。
無いはずの家を見つけて、慶太と晃に異変が起こって、光一が心霊写真を撮った程度のことしか起こっていないのだ。
そう考えたら、祖父の言っていたことを鵜呑みにして怖がっていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。

そんなある日、珍しく母から郵便物が届いた。
「光一君から届いていました。転送します」

とメモ書きが添えられている。
(光一……!?)
思わず手が震える。中には、質素な茶封筒が入っていた。
差出人名は”光一”のみで、住所は書かれていない。

恐る恐る封筒を開けると、中には数枚の写真と一枚の便箋が入っていた。
写真は全て、あの竹林の中で見つけた家の写真だった。
四ヶ所から撮った外観の写真が4枚、そしてその他の写真は室内の写真だ。
やはり光一はあの後ひとりで竹林に入っていたのだ。
「なんでこんな写真今更……」
室内の写真には、身体のあちこちを食いちぎられたような幼い子供がたくさん写っていた。もちろん生きた人間ではない。
そして最後の写真には、口の周りを血で汚したずぶ濡れの女が写っていた。
便箋にはこう書かれている。

4/5
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