すべてを知っていた友人

高校時代。私は、友人のUがとても羨ましかったんです。昔から、美人で成績もよく、優しくて、人から頼りにされている。私に持っていないものを、すべて持っているように感じました。私は、彼女のことが大好きであり、大嫌いでもありました。
自分でも嫌になってしまうのですが、Uに優しくされているのに、助けてもらっているのに、心のどこかで彼女のことを疎ましく思ってしまったのです。
ですが、そういった感情を私は誰にも話したことはありません。Uが悪くないことを知っていますし、そんなことを考えていると周囲に知られたくなかったのです。

そんなある日。私は、Uと帰り道でバッタリ会ったんです。
内心は、（うわっ。ヤバい）と思ったのですが、表面は気づかれないようにしました。
すると、U がニコニコ笑いながら、「今、ヤバいって思ったでしょ？」と言うのです。

ギクッとした私に、Uは声を立てて笑って、「今、なんでわかるの？って思ったでしょ？」と言うのです。
あまりにも衝撃が強くて私が固まっていると、Uはスラスラとこれまでの私の気持ちを話し始めたんです。誰にも言っていない、私の気持ちが、次々と暴かれていきました。

「残念。私って、本当は嫌われてたんだ」
まるで、天気の話でもするような感じでした。
そして、ニッコリと微笑んだまま、Uは「また明日」と言って帰っていきました。

私は、心の中がザワッとするのを感じました。まるで、心を読まれているかのような感覚だったのです。なぜ、Uは誰にも言っていない私の気持ちがわかったのでしょう。そして、なぜそんな私の気持ちを知りながら、笑顔で接してきたのでしょう。考えれば、考えるほどゾッとしてきました。あの笑顔の裏では、何を考えていたのでしょう。
翌日。「おはよう」と声をかけてきた彼女の笑顔は、とても怖くて、私は返事ができませんでした。もし、ここで笑顔で返事をしても、彼女にはすべてを見透かされている。そう思うとなにも言えませんでした。