異物
投稿者:たち (28)
私の中学は1年生から2年生に上がる時にクラス替えがあり、2年生から3年生に上がる時はクラス替えがなかった。
担任も2、3年生の時は同じ担任。
1年生の初めは名前順で席があり、男子の列、女子の列と交互に並んでいた。
私は名前順では最後から2番目なので廊下側の後ろから2番目の席でした。
ある日のこと、授業中に机の中から物を取り出そうとすると何かあることに気づいた。
「なんだこれ?」と机から出してみると人の指が出てきた。私は驚き、「うわっ!」と立ち上がった。
クラスメイトが全員こちらを見て、驚いていた。担任が、「どうした?」と言いすぐに近づいてきたので、「ゆ、指が」と伝えた。
担任は机の中に手を入れ確認したが何も出てこなかった。
「何もないぞ。寝てたのか?」と言い教壇の方に戻って行った。周りからは笑い声が聞こえてきたが私は突然のことにただ驚いていた。
その日の部活後に、同級生数人と今日の出来事の話をしながら帰宅していた。
しばらく歩いた時に後ろから3年生の先輩に呼び止められた。
「ちょっと、いいか?」
「はい。」と返事をし先輩と2人で帰宅していた。
「なぁ、さっきの話なんだけど。詳しく教えてくれないか?」と先輩が言うので私は今日の出来事を伝えた。
「担任って、伊藤か?」と聞かれたので「そうです。」と答えると、
「やっぱりか。」と先輩は呟き、何か考え込んでいる様子だった。
「どうかしたんですか?」と尋ねると、
「俺も1年の時、担任が伊藤だったんだよ。それと俺もお前と同じ経験したことがあって…さっき、みんなと話してる時にたまたま聞こえてさ。」と答えてくれた。
「えっ?本当ですか?指、入ってたんですか?」と私は同じ経験をした人物がいることに少し興奮しながら先輩に聞いた。
「ああ。入ってた。その時も伊藤が来て、机の中に手を入れて確認したんだ。多分、その時に指を回収したと俺は思ってる。」
先輩はどちらかというと真面目なタイプで居眠りなんてするような人ではない。私も居眠りはしていなかったので先輩の推測がスッと私の中に入ってきたような感じがした。
「なんで、そんなことをしたんでしょう?」と尋ねた。
「俺もお前も三浦だろ?多分、三浦の名字のやつだけを狙ってると思う。俺も卒業した先輩から聞いた話なんだけど。聞くか?俺はもう少しで卒業だけどお前はまだ学校に通うんだぞ?いいのか?」と言われたが、好奇心が勝り即答した。「はい!聞かせてください。」
「俺もお前と同じように訳がわからなかった。しばらくして、見知らぬ先輩が俺を訪ねてきたんだ。三浦ってやついる?って。そしたら指のことを聞かれて俺も驚いたんだ。その先輩も名前は三浦。俺らと同じ。俺も先輩に聞いたんだ。すると、先輩はあくまで噂話だけどって言って教えてくれた。
伊藤が学校に赴任したばかりで副担任だった頃、担任だったのが三浦っていう先生だったらしい。三浦先生は伊藤のことを今で言うパワハラみたいなことをしてバカにしていた。生徒の前でもお構いなし。次第に生徒達からも揶揄われるようになってきたんだ。だけど、ある日を境に三浦先生は休むようになったから副担任の伊藤が代わりを務めるようになった。すると伊藤の態度が変わって、生徒達からバカにされると今までとは違って強気で怒鳴り返したらしい。あまりの豹変ぶりに生徒達は怯え、誰も伊藤をバカにしなくなったんだ。」
私は先輩の話に耳を傾け、ゆっくりと歩いていた。
「しばらくして、学校に三浦先生が亡くなったと連絡があった。自殺らしいんだけど、初めは事件だと思われてたんだ。なぜなら、自殺した三浦先生の指が切り落とされていたから。自殺する人が指を切り落とすのか?ってことで警察も調べたんだけど何も分からず自殺ってことになった。」
それを言われて私は立ち止まってしまい、言葉を失った。
「えっ、その指って…」
先輩は小さく頷き、「あくまで噂話な。真相は誰にもわからない。伊藤だってもちろん警察の取り調べは受けたと思う。」
私は、
「じゃあ、もし、万が一、伊藤が三浦先生を殺した犯人で指を切り落としていたとしたら…同じ名字の生徒にただの嫌がらせであんなことをしてると…頭おかしい…」
先輩は、
「頭おかしいよ。ヤバいだろ。普通に。三浦先生には子供がいたみたいだから、もしかしたらその子供がいつか自分の担当するクラスに来たらってことで片っ端から三浦に嫌がらせをしてるのかもしれない。」
続けて、
「この話は誰にも言うなよ。もし、来年以降三浦ってやつが入学してきたらお前が面倒見てやれ。」と私に伝えた。
「わかりました。」と答え歩き始めた。
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