父の人生

父は教えてくれ！と叫びました。
借金を返したい。
両親と縁を切りたい。
仕事で大成功したい。
理想の家族を持ちたい……

そして父のありったけの願いを叶える為、秘術を行ったのです。

その後、父の両親は死体で見つかりました。
凍死していたそうです。
キヨ婆も父に看取られて、間もなく亡くなりました。
借金を返し終えた父は、会社を立ち上げて大成功しました。

秘術はキヨ婆と、教えてもらって実行した父しか知りません。
私には、命を削る願いがないなら知らない方が良いと、教えてくれませんでした。

父はキヨ婆の秘術のお陰で全部叶ったと言いますが、幸運と父自身の努力もあった訳で、本当にマジナイの効果かは分かりません。

キヨ婆から補足として、願をかけても善行を積めば、削られる命は少なくなることも伝授されました。

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私は父に、秘術を教えてくれと頼みました。
あまりマジナイとか占いとかは信じていないのですが、この時は藁にもすがる思いだったのです。
私の命を削ってでも父を助けたい、秘術をやっても善行を積めば良いのだから、絶対教えて欲しい。
しかし、その思いはキッパリと断られました。
父は欲しいものは手に入り、二十歳からは凄く幸せだったから、もう良いというのです。

成太に会えないのは残念だけど、皆で頑張って育ててくれとも言われました。
宣告された父の余命はあと1ヶ月、成太が生まれる予定はもう少し後なのです。

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それから亡くなるまでの約1か月、父はとても立派でした。

会社や地域の人たちに、志郎を後継者だと宣言し、仕事の引き継ぎをしました。
父の代で面倒なことは全て終わっていたので、志郎が苦労することはあまりないと思います。
亡くなる日は1人ずつ家族と対面し、最後に母との時間の中で、静かに息を引き取りました。

※

父の葬儀も終わり、志郎が社長になり、成太も生まれました。
毎日がバタバタで、てんてこ舞いでした。
父のお墓には、行ける限り行きました。