そしてはっと息を飲んだ。
そこは道路端のブロック塀辺り。
暗闇の中、ポツンと白い煙みたいなのがある。
背丈くらいの高さのそれはゆらゆらと燃え上がる火柱のごとく鈍く白い光を放ちながら漂っていた。
よく見ると、
煙の中を様々な形の黒い影がゆっくり動き回っている。
それらは対流しながら懸命に何か一つのものを形作ろうとしているようだった。
沢田もそれに気づいたようで、川口と同じ方を黙って見ていた。
やがて黒い影たちは一つに固まりだした。
それはまだあちらこちらが不明瞭であったが、目と口それと腕と足だけがぼうっと青白くその形を現してくる。
そしてその中に一重のつり上がった瞳がパチパチとまばたいているのが見て取れた途端、川口の口から自然と声が溢れ出た。
「ひ、日村なのか?」
川口は勇気を出して声を掛けてみた。
するとその青白い一重の目はジロリと川口の方を見ると口を微かに開き、ラジオの電波が混線したようなザーザーという音に混じえながら、
……そ……
うだよ……
となんとか言葉を紡いだ。
その時なぜか川口の心の奥深いところに熱いものが湧き起こってきて、じわりと目頭が潤んできた。
「約束、、、
守ってくれたんだね……」
思わず発した川口の言葉が果たして聞こえたのかどうかは分からない。
ただ青白いものは再び白い火柱に包まれると、しゅるしゅると吸い込まれるように暗く冷たい天空に消えていった。
星の散りばめられた夜空を眺めながら沢田がボソリと呟く。
━あいつ、今からどこ行くんだろうな?
本当に幽霊になって現れたな…
逝っても約束は守るいい友達だな…
意外と律儀なやつでした(笑)
━ねこじろう
怖いのかはわからないけど、良いやつだよ日村は(;_;)