心臓の激しい鼓動を感じながら金縛りにあったかのようにその場に固まっていると、
━すみませ~ん、オーダーお願いします。
と女性客の声がした。
俺はハッと気を取り直すとカウンターを離れ、二人組の座る窓際の席に走る。
それからオーダーを取り、カウンターに戻ろうかとした時だ。
━あの、、、
女性客の一人が声をかけてきた。
どうかしました?と尋ねると彼女は奥の窓際席を指差し、
「私の空耳かもしれないんですけど、さっきから男の人のボソボソ呟く声が聞こえるんですけど」
と言う。
女性客の指差す方に視線をやった途端、背筋にゾクリと冷たいものが走った。
そこは店一番奥の窓際にある丸テーブル。
白衣を着て聴診器を首にした初老の男性がポツンと座っている。
右側にある飾り窓が、彼の全身を通して透けて見えていた。
後頭部には何故だかぽっかり穴空いていて生々しい肉塊が覗いている。
そして重度の火傷を負ったかのようなその顔はあちこちひどく爛れており、眉間に深い皺を寄せて何かぶつくさ文句を言っていた。
「この出来損ないが、、この出来損ないが、、この、、」
困惑した表情の女性客に対して俺はただ強ばった愛想笑いを浮かべるしかなく、黙ってカウンター奥に戻る。
結局その日俺は途中から具合が悪くなり早々に店を閉めてから、店をあとにした。
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「焼け跡から4人の遺体が発見された。」って書いてるのに「Aさん(55歳)、その妻Bさん(43歳)、息子のCさん(23歳)」で3人しかおらんない…?
やばっ!おっしゃる通りですね
ご指摘ありがとうございます
お恥ずかしい限りです
すぐ訂正します
━ねこじろう