神戸市T区純喫茶【吹き溜まり】

顔も服も泥で真っ黒で大柄な体を気だるげに傾けて、ひたすら喋っていた。

すると間延びした講内アナウンスが響き渡った。

━間もなく特急列車が通過します。
危険ですので白線の内側にお下がりください。

やがて遠くから警笛が聞こえ次第に列車の近づいてくる音がしてくる。

そして軽い地響きを伴いながらいよいよ間近に迫った時だ。

━あの、、、

いきなり背後から耳に飛び込んできた女のか細い声。

え？と振り向くと、

腰までの黒髪で黒いタートルネックのセーターの女性が、ウサギのような真っ赤な涙目で立っている。

訝しく思いながら「なんでしょうか？」と言おうとした時だ。

いきなり「どうして私じゃダメなんでしょうか？」と呟くと、そのままスッと線路側に走りだした。

あっ！と思った時はもう遅かった。

耳をつんざくような警笛と不快なブレーキ音とともに、ドスン！という鈍い衝突音が構内に響き渡る｡

━え！マジかよ、、、

思わず声が漏れた。

ホームのあちこちから聞こえてくる叫び声や悲鳴。

その場に立ち止まり唖然として見守る中しばらくすると、また構内アナウンスが聞こえてきた。

━只今、当駅にて人身事故が発生した模様です。
現在駅員により早急に復旧作業が行われております。
お客様方にはご迷惑おかけしますが今後の下り行きのダイヤは大幅に遅れる見通しです。
お急ぎの方は、、、

事後処理のためにホームを右往左往する駅員たちを横目に俺は考えていた。