すると女性はちょっと驚いた顔をして俺の顔を見上げその後微かに微笑んだ。
「あんた、あんまり安請け合いしないほうがいいぞ。
こいつらは基本的に寂しがりやだ。
変に同情してから気に入られたら、ずっとつきまとうからな」
男はそう言うとグルリ店内を見渡した後、また口を開く。
「あんた知ってるかどうかしらんが、この世界は俺たちの生きているこちらの世界とは別にあちらの世界というのがあるんだ。二つの世界は決して交わることはないんだが、どうやらこの店は二つの世界の境にできた吹き溜まりのようなところのようだ」
「吹き溜まり?」
「ああ、大概の奴は死ぬと成仏してからあちらの世界に行く。でもまれにこの世に強い怨念を抱いたまま死んだ連中というのは、こちらに留まるようだ。
どういう理由か知らんが、この場所はその一つのようだな」
男はそう言ってからまずカウンター端に座るタートルネックのセーターの女に目をやり、それからネグリジェの女に目をやると、
「あの端のお嬢さんだけどかわいそうに、結婚まで約束していた男に裏切られたみたいでな。
ショックに耐えきれずに電車に飛び込んだようだ」と言うと今度は
「あのおばちゃんはもっと攻撃的かな。
旦那と浮気相手の女が交わってる最中に包丁でめった刺しだもんな。
それから首吊りだな」と言った後、
「何の因果だろうな?俺には全てが見えてしまうんだよな、全てが、、、」と続けると深くため息をついた。
窓際のテーブルに座る初老の男性は、あちこちケロイド状になった灰色の顔で店の外を眺めながら相変わらず同じ言葉を繰り返していた。
「この出来損ないが、、この出来損ないが、、この、、」
※※※※※※※※※※

























「焼け跡から4人の遺体が発見された。」って書いてるのに「Aさん(55歳)、その妻Bさん(43歳)、息子のCさん(23歳)」で3人しかおらんない…?
やばっ!おっしゃる通りですね
ご指摘ありがとうございます
お恥ずかしい限りです
すぐ訂正します
━ねこじろう