俺は相変わらず壁を拳で殴り続ける男の子にチラリと目をやり少し考えると、「そうだな、、もうかれこれ二週間にはなるかな」と答えた。
男はふむと頷くと「あいつ同じ学校の不良連中のターゲットにされとったみたいでな、数日前に学校裏手の林の中で殴り殺されたようだな。
その時の奴らに対する怒りの念が未だに収まらなくて、あんな形で現れとるんだろう」
と言ってから俺の顔を見る。
「そんなことまで分かるのか?」
俺は少し驚き男に言った。
「ああ、なぜだかな。
俺はな、この厄介な性分のせいでまともな生き方が出来なくなってな、今はこんな感じさ」
そう言うと男は今度、チラリと窓際の方に視線をやった。
男が口を開く。
「あのじいさん、、、元々医師なんだけど、家庭内暴力を繰り返すニートの息子を猟銃で射殺した後に他の家族も射殺し、家に火を点け自ら猟銃の銃口を口に咥えてから引き金を引いたみたいだな」
俺が男の言葉に頷くと、入口辺りからスーッと女が入ってきた。
薄汚れたピンクのネグリジェの胸の辺りにはどす黒い血が付いていて、しかも裸足だ。
寝起きのままベッドから抜け出してきたような茶色の髪に、2日は寝ていないような疲れきって荒れた肌をした顔。
瞳はどこか虚ろで焦点が合っていない。
そして何より目を引いたのは、彼女の首がまるでモディリアーニの絵画のように異様に長いことだ。
年齢は40代後半くらいか、、、
何に怯えているのかビクビクしながら店の端辺りを歩き、猫背のまま無言で俺の前のカウンターに座った。
彼女は他所から連れてきた子猫のようにビクッと肩を動かしては、怯えた様子で辺りを見回している。
首筋には青黒い筋がある。
すると女性は俯き虚ろな瞳で念仏を唱えるかのように同じ言葉を繰り返し始めた。
「いいえ、わたしは悪くありません、いいえ、わたしは悪くありません、いいえ、わたしは、、」
この女性もさっきの若い男と同じ類の者だと分かった俺は軽く一つため息をつき精一杯の愛想笑いをしながら「そうそう、あなたはちっとも悪くない だから安心してください」と取り敢えず言ってあげる。


























「焼け跡から4人の遺体が発見された。」って書いてるのに「Aさん(55歳)、その妻Bさん(43歳)、息子のCさん(23歳)」で3人しかおらんない…?
やばっ!おっしゃる通りですね
ご指摘ありがとうございます
お恥ずかしい限りです
すぐ訂正します
━ねこじろう