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都市伝説

セイスケくんさんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

深夜のコンビニ老人
長編 2024/11/16 09:04 74view

僕の名前は田中翔太。都内の大学で心理学を専攻する二年生だ。
父は数年前に病気で亡くなり、母と高校生の妹との三人暮らし。家計は厳しく、僕は昼間の講義やゼミの合間を縫って、夜は駅前のコンビニで深夜のアルバイトをしている。
深夜帯は客も少なく、静かな店内でレポートを書いたり勉強したりできる。一石二鳥だと思っていた。

コンビニで一緒に働く同僚の山田誠さんは35歳。以前は大手の広告代理店で働いていたが、過労で体を壊し、このコンビニで新たな人生を歩み始めた。明るく社交的で、店のムードメーカーだ。彼の豊富な人生経験からくる話は面白く、僕にとって良き相談相手でもあった。

「翔太、人生は一度きりだ。若いうちに色々挑戦しておくといい」と彼はよく言った。その言葉には、自身の過去への後悔と僕への期待が込められているように感じた。

しかし、そんな平穏な日常に奇妙な影が差し始めた。

毎週金曜の夜11時50分になると、決まって一人の老人が現れるのだ。背中を丸め、古びた黒いコートを羽織り、深く帽子を被ったその姿は、闇から抜け出してきた亡霊のようだった。彼が入店するたびに鳴るガラス扉のチャイムは、冷たい風を伴って店内に響き渡る。

老人が購入するものは毎回同じだった。缶詰、ビニール紐、虫除けスプレー、そして小さなぬいぐるみ。その奇妙な組み合わせに、僕は言いようのない不穏さを覚えた。特に、ぬいぐるみを手に取るときの彼の震える手と、その目に浮かぶ深い悲しみは、心理学を学ぶ僕の心に刺さった。

「翔太、あの老人、何か事情があるんじゃないか?」ある夜、山田さんがふと呟いた。

「そうかもしれませんね。でも、個人の事情に踏み込むのは良くないですよ」

「そうだな。ただ、あの目は何かを訴えているように感じるんだ」

それ以来、山田さんは老人に強い興味を持ち始めた。店が暇な時間帯にネットで老人に関する情報を調べたり、彼の行動を分析しようとしていた。

「翔太、聞いてくれ。あの老人、20年前の一家心中事件の生き残りらしいんだ」

「一家心中事件……?」

「そうだ。家族全員を失い、彼だけが生き残ったらしい。その事件の現場には奇妙なシンボルや儀式の痕跡があったという噂もある」

山田さんの目はどこか遠くを見つめていた。その瞳の奥に、彼自身もまた何か深い悲しみを抱えているように感じた。

「山田さん、あまり深入りしない方がいいですよ。危険かもしれません」

「大丈夫だ。ただ、彼の悲しみを理解したいんだ」

それから、山田さんの執着は日増しに強くなっていった。彼は仕事中も上の空で、頻繁に古い新聞記事や怪しげなサイトを読み漁っていた。目の下には濃い隈ができ、顔色も悪くなっていった。

「山田さん、本当に大丈夫ですか?」

「ちょっと寝不足なだけさ。でも、もう少しで全てが見えてきそうなんだ」

次の金曜の夜、山田さんは異様な緊張感を漂わせていた。11時50分、ガラス扉のチャイムが冷たく響き、老人が現れた。山田さんは意を決したように一歩前に出て、穏やかな声で話しかけた。

「いつもご利用ありがとうございます。何かお手伝いできることがあれば、お知らせください」

老人はゆっくりと顔を上げた。深い皺に覆われた顔、灰色の瞳が山田さんを見据える。その瞳の奥には、底知れぬ闇と悲しみが渦巻いていた。

「あなたには関係ない。だが、家族の絆を知っているなら、この苦しみがわかるだろう」

その言葉に、山田さんの笑顔が一瞬凍りついた。彼は何か言い返そうと口を開いたが、言葉が出てこなかった。老人は商品を受け取り、静かに店を後にした。

その夜、山田さんは深刻な表情で僕に話し始めた。

「翔太、俺は彼の過去を調べた。一家心中事件の唯一の生存者だ。彼は家族を失った悲しみから、禁忌の儀式に手を染めているのかもしれない」

「禁忌の儀式……?」

「家族の魂を呼び戻すための古い呪術だよ。そのために、彼はあの奇妙な組み合わせの物を買っているんだ」

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