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おいえれさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

立花くんの家
長編 2024/11/03 19:26 1,001view
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高校時代の話です。

金曜の朝、友人の時田くんが某アニメのDVDBOXが届いたので、今夜泊まりで一気見をしないかと誘って来ました。僕も丁度見てみたいなと思っていたので「お、いいね!見よう!」「どっちの家にする?」なんて話をしていると、隣から「なあ、それ俺ん家で見ないか?」と声を掛けられました。声を掛けてきたのは同じクラスの立花くんでした。立花くんはクラスでも目立つグループの1人で、ガラの悪い連中と付き合いがあると噂の人物で、僕らとは殆ど関わりのないタイプの人間でした。そんな立花くんに急にうちで見ないか?と誘われ2人でどうしていいかわからず困惑していると「なあ!俺もそれ見たかったんだよ。いいよな?今日泊まり来いよ」と、脅しのような口調で睨みつけてきたので、僕らは「わかったよ」と返事をするしかありませんでした。

立花くんの家は郊外にあり、放課後3人でバスに乗り立花くんの家に向かいました。バスの中で時田くんが「立花くんは何でこのアニメ見たかったの?」と話しかけると、立花くんは「え?ああ…なんかテレビ?で見て」と曖昧な返事をしたので僕たちは少し「ん?」と違和感を感じました。

立花くんの家は大きな二階建ての日本家屋でした。急な泊まりにも関わらずお母さんはニコニコと僕たちを迎えてくれ、豪華な夕飯をご馳走してくれました。立花くんは「普段、俺と母親の2人きりだから友達が来ると張り切るんだよ」と少し照れ臭そうでした。

夕飯も食べ終えて、2階の立花くんの部屋でDVDを見始めました。いざ見始めるとあんなに見たかったと言っていた立花くんは退屈そうで、ベッドに寝転んで携帯を弄り始めました。僕たちはその様子に気付きながらも黙ってアニメを見ていました。そのうち立花くんは電話を掛け始め、30分後やっと終わったと思ったら「もう少ししたら友達来るから遊び行ってくるわ。お前らはここで見てていいから」と言うと、そのまま部屋を出て行ってしまいました。外から音楽のうるさい車がやって来て、直ぐに遠ざかって行くのを聞いて、残された僕らは呆然としていました。時間はもう10時を過ぎており、「帰る?」「え?もうバスないよ?」「迎え呼ぶ?」と話しているとドアをノックして、お母さんが入ってきました。「うちの子がごめんなさいね。下の和室にお布団敷いたから泊まって行って」と和室まで案内をしてくれました。

和室には布団が2組敷かれており、僕は奥の床間の前の布団に、時田くんは手前の襖の横の布団に入りました。お母さんは僕らが布団に入ったのを確認すると「じゃあおやすみなさい」と電気を消し部屋を出て行きました。

布団に入ったものの、何だか気持ちが落ち着かずボーッと真っ暗な天井を眺めていると、何と無く目の前に何かいる気がしました。徐々に目が暗さに慣れて行くとそれが何なのかハッキリとわかりました。

天井から赤ちゃんが縦にぶら下がっていました。

何か紐のようなもので括られているようで、ユラユラと揺れています。

不思議と怖さはなく「人形?」「部屋に入った時あったけ?」と考えながらボーッと眺めていました。

どれだけ時間が経ったのか、ふと時田くん寝たのかな?と気になり横を向くと、時田くんもボーッと赤ちゃんも眺めていました。僕は何故か「ああ時田くん見てるんだ」と安心をしてそのまま眠りに付きました。

翌朝、目を覚まし直ぐに天井を確認すると、昨夜見た赤ちゃんの姿はありませんでした。同じく目を覚ました時田くんも天井を見ており、僕が「ないね」と言うと真面目な顔で大きく頷きました。

2人で和室を出て、リビングへ行くとお母さんがニコニコした笑顔で「おはよう。朝ごはん食べて」と僕たちを椅子に座らせました。朝ごはんを食べながらお母さんが「食べたら家まで車で送ってあげるね」と言うと、時田くんが「いえバスで帰りますので大丈夫です」と強い口調で断りました。

バス停まで何と無く無言で歩いていると、時田くんが口を開きました。「立花くん最初からアニメなんて興味なかったんだ」「あれを僕らに見せるために、このアニメが見たいなんて嘘ついたんだよ」「ありえないよ」と1人でブツブツと言っています。僕は「何のために?」と聞きました。すると時田くんは「知らないよ!」少し怒っているようでした。僕は続けて「でも本当に意味がわからない。あの赤ちゃんは何だったんだろ。人形?幽霊?でも怖くなったよね?」と言うと、時田くんが「気付かなかった?」と言いました。僕は「何が?」と返すと時田くんは一息ついて、「お母さんが襖の間からずっと僕らの様子を見てたんだよ」と言いました。それを聞いた瞬間、全身に悪寒が走りました。「え、本当に?」「本当だよ。赤ちゃんが見えてボーッと見てたら横から視線を感じて、横目で襖を見たら少し開いていて、正座したお母さんが片目でこっちをジーッと見てた」「え?何で?」「知らないよ。とにかくあの親子はおかしいよ」「でも…」と言い合いをしているとバスが来ました。バスの中ではずっと無言で気まずい雰囲気のまま家に帰りました。

月曜日、気まずさが残ったまま2人で席に座っていると立花くんがニヤニヤした顔で近付いてきて、「なあ?面白かったろ?」と声を掛けてきました。時田くんは「全く面白くなかったよ!」と少し声を荒げて返しました。すると立花くんはチッと大きな舌打ちをした後「何か勘違いしてない?俺はアニメの感想を聞いたんだよ」と言うと、教室を出て行ってしまいました。

それから僕らと立花くんは一言も会話する事なく、高校を卒業しました。

それから2年後の成人式。都内の大学に進学した僕は久しぶりに地元に帰り同級生たちとお酒を飲んでいました。地方の大学に進学した時田くんにも久し振りに会い話をしていると、ふと時田くんが周りを見渡し「立花くんいないね」と言いました。そういえばと僕も見渡していると、クラスのリーダー的存在で人気のあった東くんが「久し振り!2人とも変わってないなあ」と声を掛けてきました。それぞれの近況報告をした後に「ねえ立花くん来てないの?」聞いてみると、東くんは「あれ?お前ら仲良かったっけ?」と驚きました。僕と時田くんは高校時代にあったあの出来事を話すと東くんはさらに驚き「え?あれお前らにまで見せてたの?!」と言いました。「お前らにも?」「そうだよ!赤ちゃんだろ?あいつ仲良い奴に家泊まらせてあれを見せようとすんだよ。気持ち悪いからだんだん誰も相手しなくなってさ。そうかお前らにもかあ!でもおばさんが覗いてるのは気付かなかったなあ。そうかあ」と呆れているようでした。

ちなみに立花くんとはみんな距離を取っていたらしく、卒業後は何をしているのかどこにいるのかもわからないということでした。

あの赤ちゃんは何なのか、何故それを見ている様子を母親は見ていたのか、嘘を付いてまで泊まらせて見せたかった理由は何なのかいくら考えても答えが出ないモヤモヤする出来事でした。

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