心霊スポットに行った親友の話
投稿者:とくのしん (58)
「今もずっと聞こえる。ホンマ嫌や・・・私、死にとうない」
「大丈夫!大丈夫やでエミ!」
憔悴しきったエミを連れて、向かった先はとある寺。そこは地元では有名な寺で、ネット情報ではあるがお祓いには定評があった。
電車を乗り継ぎ、向かった先は県内で有名なある寺。ネット情報ではなるが、お祓いには定評があった。大きな寺院門を前にして二人が歩みを進めようとしたとき、その向こうに住職らしき男性が立っていた。事前に連絡をしていたために出迎えてくれたのだろうとユカリは思った。
「こんにちは。あの、電話したヨコタと申します」
ユカリは深々と頭を下げると
「あんた、エライもん連れてきたなぁ」
野太い声でそう返答された。
頭をあげたユカリはその言葉を聞いて、エミに憑りついたであろう幽霊が、相当悪いものなのかと思った。それを聞いたエミからは不安が溢れている。
「あの、友達を助けてやってください!お願いします!」
エミに代わり、ユカリは再度頭を下げた。すると住職が
「何言うてるねん。お友達のことやない。あんたのことや」
そうユカリに声をかけてきた。ユカリは住職の顔を見た。住職の鋭い視線が突き刺さるようだった。
「わ、私ですか?」
「そうや、あんたのことや」
「いや、私やなくここにおる友達が・・・」
ユカリの言葉を遮るように、住職が言い放った。
「あんたわからんか。連れてきた友達、もう死んどるやないか・・・」
ユカリは固まった。その言葉を聞いて。
そしてエミに視線をゆっくりと移す。
「なんや、死んでることに気づいておらんかったか。あんた、もう死んどるで」
その言葉を聞いて、エミは一歩後ずさった。そして踵を返し、急ぎばやに石階段を下っていく。そのときのエミの表情をユカリは今も忘れられないという。
「あんときのエミですけど・・・信じられへんけど笑っとったんです・・・」
その場をゆっくりと立ち去っていくエミを引き留めようと、後を追おうとしたユカリに住職が怒鳴った。
「行くな!行くんやない!」
振り向いたエミの両肩をガッと掴んだ住職が語気を荒げていった。
「あの子はもう死んどる!それもタチの悪い悪霊に憑りつかれてな!あんたらが来る前から、物凄い悪い気が近付いてくるのがわかった。だから門をくぐらせんかった!ええか、あの子のことはもう忘れろ。憐れんだりもするな。可哀想なんて絶対に思ったらあかん!頼られてあんたも死ぬことになるで!現にあんたを頼ってきたんやからな!」
あまりにも現実離れした出来事に遭遇してか、ユカリはその場に立ち尽くしていた。
蝉の声に混じり、遠くで女の高笑いがかすかに聞こえた気がした。
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