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心霊

やおよろず やおさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

笑うシミ
短編 2024/09/01 13:31 761view

だけど、その塀に近づくにつれ、何かが妙に動いているような、
そしてボソボソと声が聞こえる気がしたんだ。

「こんな夜に子どもか?夜遅くに何してんだ…」

俺は足早に塀の方に向かった。そして気づいたんだ。

それは、人影じゃなかった。

「シミ」だ。

昔、落書きがあった場所を覆い隠すように、巨大なシミが広がっていた。
でも、それはただのシミじゃなかった。
あまりにも人間の形に似ていたんだ。

ニタニタと笑うような、三日月型の目と口が、暗闇の中で白く浮かび上がっていた。

「これを人影と見間違えたのか…?」

とにかく気持ち悪い。酔いもすっかり冷めたし、早く帰ろう…そう思ってその場を離れようとした。その時、

ガクンッ!

急に何かに左足を掴まれた。
体が地面に倒れ込むように引きずり下ろされ、スマホが手から滑り落ちた。
倒れた拍子にスマホのライトが足元を照らす。

そこに、俺は見たんだ。
小さな黒い手が、俺のズボンを掴んでいるのを。

「うわぁぁぁ!!!!」

何が起こっているのかもわからず、恐怖で足をばたつかせ、なんとかその手から逃れようと必死だった。
そして、全力で走った。

いつの間にか、公園の入り口まで来ていた。
泥や枯葉が服にくっついて、転んだ時にできた傷が痛んだ。あの出来事が現実だったと、体が教えてくれる。

深呼吸をして、無理やり自分に言い聞かせた。
「酔ってたせいだ。きっとそうだ。早く帰ろう。明るい道を通って帰ろう。」

俺は、街灯が多い道を選んで、家まで急いだ。
だけど、途中で気づいたんだ。

俺の影、ずっと笑ってるんだよ。あの塀のシミと同じように。

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