4号室：ウンメイ

今住んでるのはマンションの4Fなんだけど。
この前さ、何か寝れなくて。
深夜…3時頃だったかなー、何気にベランダに出て炭酸水飲んでたんだよ。
風もないし蒸し暑くて、完全に熱帯夜。

んで、おれのベランダからは割と眺めがよくて。
ちょうどマンションの裏側になるんだけど、駐車場が見渡せてさ。傍にずーっと道が伸びてるのよ。
その脇にジュースの自販機があって。
たまたまボーっとその辺を見下ろしてたら、こんな夜中に誰かいるんだよ。
なんだろ、ジュースでも買いに来たのかなって動きを目で追ってた。暇だったし。

よく見たら女でさ、明らかにババア。
髪長くて、ピンク色の服着てて。下は何か赤いジャージみたいな感じ。
で、動く度にカラカラ煩いから、多分サンダルみたいなの履いてんのかなーって。
変なカッコしたオバサンだなーって思ったよ。

結局、自販機で何を買う訳でもなくさ、ウロウロしてんの。
そのうち、四つん這いになってクルクル回りだして。ずっとクルクルクルクル回ってんの。

うわー、やべェ。深夜にキモいの見たなーって部屋に戻ろうとしたらさ、急にそのオバサンが見上げて目が合ったんだよ。
で、四つん這いのまま不格好に走り出して。
もうキモさMAXで慌てて部屋に戻って鍵閉めてカーテン引っ張った。

全神経が耳よ、耳。
そしたら、何か音がし始めて。絶対階段を上がってきてる。

カンカンッ、カンッ、カンカンカンッ。

段々音がでかくなんの。もう流石にビビって。
やべーやべーやべーぞこれ。
それしか浮かばなかった。
せめて友達の声でも聞けたらってスマホを握ったら…、

ガンガンガンガンガンガン。
ガンガンガンガンガンガン。