古ぼけた赤のセダン
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/07/17
14:35
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「あ、これ?
ハハハ、、もう随分前の話だよ。
もう剥がさないといけないんだけどね。
子供たちの親たちが今もこっちに来るんだよ。
みんな、もう結構良い年なんだけどね。
未だに何か変わったことがないか?ってさ。
あれから何十年も経っているというのに、いい加減あきらめたらと思うんだけどね」
と少し呆れた様子で苦笑する店主を前に、俺は何か言いかけたが途中で止めた。
いつの間にかカセットレコーダーから流れる曲は、別のものに切り替わっている。
俺はその旋律をさっき聴いたような気がした。
※※※※※※※※※※
Hと一緒に店を出た後、二人車へと乗り込む
それからエンジンを掛け前進し、ゆっくりコンビニの敷地から出ようとした直前のことだ。
何故だろう、ゾクリと背筋に冷たいものが走る。
俺は一旦ブレーキを掛けると何気に後方に振り向いた。
店舗入口前にあの店主がポツンと立っている。
背後のショウウインドウから射す人工的な灯火が、店主の姿をボンヤリ浮かび上がらせていた。
でっぷりとした体躯に黒のスウェットの上下。
白い長靴を履いている。
感情のない無機質な目でじっとこちらを見ながら、不自然な薄ら笑いを浮かべて、、、
そしてコンビニ店舗の背後の暗闇には、
店舗の倍以上はありそうな立派な二階建ての日本家屋がひっそりとそびえ建っていた。
【了】
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