お客さん、幽霊とか信じますか?
投稿者:ねこじろう (149)
それは三島が左側のウインドウに寄りかかり、夜の街をボンヤリ眺めながらウトウトしている時のことだった。
「お客さん、幽霊とか信じますか?」
唐突に聞こえた声の方に少し驚いた彼は視線をやる。
白髪の運転手は少し疲れた顔で三島の方をチラリと見ると、それからまた正面のフロントガラスに向き直り続ける。
「ごめんなさいね変なこと言っちゃって、驚かしちゃいましたかね?
まあお客さん分別もあって真面目そうだから、そんなのバカバカしいと思われるかもしれませんでしょうがね。
かくいう私も以前までは全く信じてなかったんです」
運転手はそこまで言ってから一呼吸置き改めてミラー越しに三島の顔を真剣な目で見ると、今度はきっぱりと言った。
「でもね断言しますが、
今は間違いなく信じております」
運転手の最後の言葉で瞬時に車内は重々しく息苦しい空気が漂いだす。
それとは対照的な煌びやかで開放的な繁華街の景色が、三島の左手の車窓をどんどん後ろに流れていっていた。
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久しぶりに同僚と居酒屋に立ち寄り夢中になって話し込んでいたらいつの間にか終電を逃してしまった三島は、車で1時間はかかるのを覚悟して止むを得ずタクシーに乗ったのだ。
さきほどの運転手からの奇妙な告白でさっきまでの飲み会の楽しい気分が一瞬で霧散した三島だったが、少し興味を引かれ運転手に尋ねてみる。
「それはまたどうしてなんですか?」
運転手は三島の言葉に少し表情を和らげると、口を開いた。
「私の話を聞いていただけるんですか?
それはありがとうございます。
いやね私も先週からずっとこの話を自分の心の中にしまっておくのが辛くてね、誰かに聞いてもらいたくてしょうがなかったんです。
それはそう先週の今日の、ちょうどこれくらいの深夜のことでした。
これに似たタクシーの話あったよね。
コメントありがとうございます。
─ねこじろう