売れない人形

「なっ！！？」
信じられない光景だった

これまでの異常がかすむほどのさらなる異常

俺は何の躊躇いもなく自分の指をハサミで傷付けている

血が滴り出している
だが、映像の俺はまったく痛がる様子はない

映像の俺は流れ出る血を人形にたらし始めた

人形の左手の部分にたらしている

まるで何かの儀式みたいだ

この人物は本当に俺なのか

俺でしかないはずだが、あまりに身に覚えのない行動をとり過ぎだ

自傷行為をするだなんてありえない

現に今の俺の手に傷なんて

俺は自分の手を見てみると

「えっ？」

その手はいくつもの切り傷がつけられていて全体的に真っ赤だった

傷が塞がり始めているものや、今つけられたような傷まで

あちこち傷だらけ

左手だけじゃない
右手もだ

両手の肉が削られてひどい状態だった

「いっ・・・いってぇえええええ！！」

とんでもない痛みが生まれた
それはそうだ

こんな傷だらけで痛くないはずがない

何故、今の今まで気づかなかった？
これだけの傷で何故今まで何も感じることがなかった？

カメラに映る俺が自傷行為をしているのを見て、ようやく気付くことができた

俺は寒気を感じた

何かとんでもないことが起きている
それは間違いなかった