「おーい、転ぶぞー」
森でそんな声が聞こえると、決まって誰かが転ぶ。
「おーい、倒れるぞー」と聞こえたら、必ずどこかで倒木が起こる。
「おーい、落ちるぞー」と聞こえたら、落石が起きる。
普通は不気味に思うが、この森ではよくある事だった。
予言なのか宣告なのか、ハッキリとしない声。なんとも言えない情報量。
いつも聞こえてくるけど、誰が言ってるのかすら分からない。
ばあちゃん曰く「森の神様が危ない事を教えてくれる」って。
神様なんてのがいるとは思わない。それでもこの不思議現象は、小難しい理屈で説明できるものではない気がした。
そして、今日もいつもみたいに森に行った。
友達はいつもと違う道を教えてくれた。クローバーのいっぱい咲く穴場があるって。
その道すがら、変な形の石を見つけた。
ただの変な石というよりも、なにかの構造物みたいに見えた。
表面は土まみれだし、荒く削ったみたいにガタガタ。
空洞の立方体、一つだけ空いた穴。まるで何かの家だ。
友達は「へんなの」とだけ言って、その石を踏んでしまった。
石が割れて、道に灰色の破片が散らかる。
友達は振り返りもしなかった。
数分歩いて、ようやくその穴場についた。
確かに、不思議な程そこら中にクローバーが生い茂っていた。
クローバーだけじゃなくて、色んな草花が元気に咲いている。
これならどれだけ摘んでも平気そうだ。
友達と花輪を作っていたら、また声がした。
「おーい、倒れるぞー」
あの声だ。また倒木か?
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