【short_66】放火事件

これは以前住んでいた町での出来事。
当時はワンルームマンションに住んでいたのだが、
一時期周辺でものすごく放火が多かった。

歩いてすぐの距離にある自転車屋さんが放火にあった。
障害を持つ息子さんがいたらしいが、犠牲になってしまったらしい。

ウチの裏のアパートも火事になって全焼した。
ボクの部屋の中まで白い煙が入ってきており、天井から3分の2くらいまで充満していた。

それから少しして、郵便受けの中に怪文書が入っていた。
それは近所にある銭湯を告発する文書で、銭湯の主が友達を呼んでは裏側から女湯を覗いて楽しんでいた・・・というとんでもないものだった。

どうやらこの周辺にばらまかれたらしい。本物の怪文書だ。
銭湯は営業をやめて廃止された。元々客も減っていたのもある。

そしてしばらくして、銭湯のすぐ近くにあったお総菜屋さんが火事になった。
昔ながらの煮物やキンピラなどの総菜を売るこじんまりとしたお店で、爺さんと婆さんで営業していた。そこが火事になった。放火だという。激しく燃え上がる炎で電線が切れそうだった。・・・二人ともこの火事で亡くなった。

燃えた総菜屋さんと、廃止された銭湯を取り壊すと、そこには大きな空き地が出来た。
数年もかからず、そこには立派なマンションが建った。ナントカプルデンシャルみたいな大層な名前のマンションだ。

正直言うと、火災があったからその跡地を有効利用するためにマンションが建ったのではなく、マンションを建てたいがために、邪魔な総菜屋と銭湯を排除したんじゃないのかと・・・そんな風に思えて仕方ない。お年寄りをあやめて住む高層階の眺めはいかようだろうか。

ちなみに、これは関係ないかもしれないが、その地区出身の国会議員が、寝室で突然死するという不審死も同じ頃に起きている。
きっと、この件の真相を知っている人間がどこかにいるのだろうな・・・と思う。