楽しい夢
投稿者:八尺マン (46)
「そんな呑気な話じゃないんだ。俺の見る夢はどれも現実的で悲惨な夢ばっかだって、いつも言っているだろ! 俺にとっては海外で家族旅行なんてのは非現実な話だったんだ。それが現実的な話になっちまった。ってことは、このまま家族旅行にいったら悲惨な目に合うってことじゃないか!? いつも夢の方が現実に寄っていたけど、今回は現実が夢に寄ってきているんだよ!」
いや、それはあまりに話が飛躍し過ぎだろう
と俺は思ったのだが、友達はそう思えて仕方がないようだった
「俺のおふくろは行く気満々なんだ。これまで海外行ったことないからな。ずっと連絡してこなかったくせに毎日のように、海外旅行にいこうって連絡きてる。でも、俺は絶対行かない方がいいと思うんだ。だから、旅行に行かないようにするにはどうしたらいいか、一緒に考えてくれないか」
俺はそれはあまりにもったいないんじゃないかと言ったが、友達は意見を変える気はないようだった
「だんだん夢が鮮明になっていくんだ。夢の中の俺はどうやら3月に旅行に行っているらしいんだけど、おふくろが行こうって言っている時期も3月なんだ。どうにか3月に行くのだけは避けたいんだ。頼むよ」
あまりに必死に頼まれたから、俺は仕事が忙しいと嘘をつくという、ありきたりの案を出した
友達のおふくろさんはそれでもどこか暇はないのか、としつこく聞いてきたようで、最終的に俺が友達の会社の上司を名乗って、今は彼がいないと仕事が回らないと電話で伝えるということまでした
そこまでしてようやく海外旅行に行かないことになったようだ
やれやれ
たかが夢でなんで俺がここまでしないといけないんだ
しかし、その3月に事件が起きた
友達のおふくろさんが当てた賞品の旅行先
そこでテロが起きたのだ
有名なショッピングモールで武装集団が一般市民に銃撃して多数の死者が出たらしい
そのショッピングモールに例のレストランがあった
そのレストランには人が沢山いて、そこでの被害者が一番多かったらしい
「やっぱり俺は悲惨な夢しか見ないんだな」
俺はすぐに友達に電話して、友達が最初に言った言葉がこれだった
家族で楽しく食事をする夢
それは悲劇を予言する夢だったのだ
そんなことがあって、もう5年が経った
今でも忘れることができない不思議体験だ
ん? その友達は今も元気なのかって?
死んだよ
今から1年前にな
宝くじ売り場で並んでいる時に車が突っ込んできてな
即死だって
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