「先生、診てください・・・」
そう言って若い女が診療所にやって来た。
「私、体がどんどん虫になって行くんです!!」
そう言いながら服を脱ぐ女。
女の身体を見て愕然とする。
脇あたりから下腹までが、まるでコオロギの腹のようになっており、呼吸と共に膨らんだり縮んだりと脈動している。
「そんなバカな・・・人間が昆虫になるなど、聞いたこともない」
私は看護師に命じた。
「キミ、すぐに入院の準備を。隔離病棟がいいな。面会謝絶だ」
「先生、私治るんでしょうか・・・」
「そうだね、血液検査したりレントゲンとったり、いろいろ調べて見ない事にはなんとも言えんが・・・時間はかかるがじっくり診て行こう」
医師の頭の中では別の事が想像されていた。
(この女、放置したら本当に昆虫人間になってしまうのか? そしてコイツ、卵を産むんだろうか・・・。興味は尽きない。すべて記録しておこう。そして論文にまとめて・・・私は一躍注目を浴びるのだ!!)
だがこの時、医師はまだ気付いていなかった。
自分の背中にも、コオロギの羽根のようなものが小さく生え始めていたことを・・・。
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食用コオロギ会社倒産記念カキコ