【short_50】銭湯
投稿者:kana (210)
数年前、田舎に帰省した時に、銭湯へ行った。
もちろん実家には風呂もあるけど、その土地にある銭湯というのが
これまた歴史ある銭湯で、まさに『ザ・昭和レトロ』と言った風情。
行けばまるでタイムマシーンにでも乗ったように、一気に過去にタイムスリップできる。
そのワクワク感が楽しくて、田舎にいる間はもっぱら銭湯通いをした。
その日の夜も、やはり銭湯へ向かった。
下駄箱にサンダルをしまい込み、板鍵を抜く。
番台にお金を払い、広々とした脱衣所に向かう。
大きな鏡、メモリが少しずれた体重計、壊れかけのマッサージ椅子。
それらを眺めながら、脱いだ服を竹籠に突っ込み、浴場へと足を踏み入れる。
・・・どうやら今日は客はまだ自分だけらしい。貸し切り状態である。
ボクは自由気ままに風呂を楽しんだ。
・・・頭を洗っていると、突然後ろから声をかけられた。
見ると子供である。10歳くらいの男子。その子がなぜかボクに濡れた頭を見せながら
「あのぅ~泡とれてますか~・・・あのぅ~泡とれてますか~」と聞いてきた。
「えっ・・・うん、とれてるよ」ボクはイキナリ子供が話しかけてきてびっくりはしたけれど、一応見てあげた。子供は一礼すると後ろの方へ駆けて行った。
ボクは鏡に向き直って自分の泡をシャワーで落とした。
(あの子、いつの間に入って来たのかなぁ・・・それとも見えないとこにいたのかなぁ)
ちょっと不思議に思ったが、まぁ、なくはない話だ。
頭も洗い終わって、さてもうひとっ風呂浴びようかと立ち上がってみると、
先ほどの男の子がどこにもいない。
結局この日は、風呂をあがるまでその子を見つけることはできなかった。
帰り際に番台の爺さんに子供の事を聞いてみた。
「それはきっと、ウチの座敷童じゃないですかねぇ。時々出るらしいですわ」
どうやら長年続く銭湯には、何かが棲みついているみたいですね。
ショタっ…。カワイイ!