【慎太郎くんのいたという家】
投稿者:ねこじろう (147)
「どうだろうな。
もしかしたら、この世の者ではなかったかもな」
と言うと静かに目を閉じた。
愛実が帰った後しばらく寝た藤木は、看護師が持ってきた夕飯を終える。
それから読みかけの小説を読んでいたのだが、ふと思い出したかのように右手にあるテーブルに視線をやるとその引き出しを開け、中からあるモノを出すとテーブルの上に置いた。
それはあの家から持ち出した一体のフィギュア。
藤木が高校生の頃好きだったアニメの女子キャラで、思わず持ってきてしまったのだ。
彼はしばらく満足げにそれを眺めていたが、やがて睡魔に襲われ微睡みの泉に嵌まっていく。
病棟の消灯は早く、その後間もなくして室内の灯りが消された。
それからどれくらいが経った頃だろうか。
彼は悪夢に苛まれ、最後は奇妙な声で目が覚まされる。
それはあの家で聞いた甲高い男の声。
「ママ~、ママ~、どこにいるんだよ~」
「返せよ、ボクのフィギュア返せよ!」
暗闇の中藤木はうなされながら半身を起こし、ほっと深いため息をつく。
激しい心臓の動悸を感じていた。
額から流れた生暖かい汗が頬をつたい、顎先からポトリと落ちる。
それからようやく気持ちが落ち着いてきた彼は辺りを見回し、途端に一瞬で背筋が凍りつく。
病室入口のドアが開いており、そこに誰かが立っていた。
廊下からの逆光でその姿は人影のようだが、その者は異様に背が高くて天井にも届くくらいだった。
【了】
怖いです ゚ ゚ ( Д )
コメントありがとうございます。
─ねこじろう
読み応えありました。
コメントありがとうございます。─ねこじろう
慎太郎くんに感情移入して読んでしまったのでなんだかもの悲しくせつない気持ちになりました。
後はご想像にお任せします。か。
怖い話のオチ考えるのは大変ではあるけど。
少なくとも何かは考えて欲しい