ドタッ
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2023/12/20
20:49
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そう訊くと、Iさんは首を振った。
「実はね、つい先日引っ越したんだ」
――なぜ?
未来の虚像は現実になって、これから先は、もう何も起こらないのではないか。
私の疑問に、Iさんは恐れを滲ませた声で答えた。
「――また、聞こえてきたんだよね、物置部屋から。
今度は、言い争うような男たちの声が。
取っ組み合いでもしているような、暴力的な物音が。
それで、最後には、『ぐぅ……』っていう、苦しげなうめき声がするんだ。
……だからもう、あの部屋にはいられなかったんだよ。
いつかきっと何かが起きる、あの部屋には――」
〈了〉
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