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呪い・祟り

キミ・ナンヤネンさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

先輩のお守り
長編 2023/12/17 05:04 6,973view
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僕は始めたばかりの夜の警備のアルバイトで、先輩のAさんとペアを組むことになった。

話によると、Aは人に対して怒った事などなく、よく言えばおとなしい、悪く言えば覇気がないような人らしい。

新人は,ある一定の期間は指導役も兼ねた先輩と二人で警備するのがここでの決まりだ。

誰もいない大きなビルの警備の途中で、適当な時間に1時間ほど休憩を取る事になっている。

時計が深夜の2時を回った頃、僕とAは休憩室へ入った。

備品として用意してあるインスタントコーヒーとお菓子を二人で頂きながらテレビを点けた。

この暑い季節にはお約束の番組が放送されていて、ちょうどタレントが恐怖体験を語っているところだった。

「あれは10年以上前だったかなあ、俺も恐怖体験したことがあるよ。」

大学生だったある夏休みの日に、友人B、Cと合わせて3人で、ある山の中腹に肝試しに行った時の話だそうだ。

Aさんは話を始めた。

その場所は、丑の刻参りがよく行われていて、ある大木には藁人形がいくつも打ちつけられているという。

心霊スポットとかに詳しいBによると、山道からかなり奥にの険しい場所でそれらしいの大木がいくつかあるという、丑の刻参りにはうってつけの場所らしい。

その山まで車を走らせ、そこであろうと思われる場所の近くの道路の端に車を寄せて停め、俺(A)たちは車を降りた。

3人はそれぞれ持ってきた懐中電灯を点けて山へ入っていくが、それらしい場所はまだ奥にあるようだった。

丑の刻参りに使われる木というのは、例えば縄が巻いてあるとか、そこで一番の大木とか、何らかの分かりやすい目印がある事が多いらしい。

3人で歩いて奥へ進んでいくがそれらしい木が見つからなかったので、3人で3方向に分かれて探すことにした。

持ってきた懐中電灯のうち俺の物は古い型だったが、3つとも光は強力で、少しくらい離れてもお互いに明かりを向けあう事で確認できるから、離れていてもすぐに合流できるだろうという判断だった。

前日まで雨が降り、奥に行くほど陽が当たらないせいで地面はぬかるみ、歩くと何度も足を取られそうになる。

俺は一人で奥へと進んでいくと、それらしい大木を見つける事が出来た。

その木は、この辺りではかなり大きくて目立つ存在だった。

やっと見つけた喜びというか興奮というか、よく足元を見ないで歩いたせいでぬかるみに足を取られてしまった。

こんな暗闇の中で転ぶと怪我をしてしまいそうだから、横の木に手を掛けて踏ん張り、なんとか転ぶことは避けられた。

しかし、その拍子に懐中電灯を手放して落としてしまった。

懐中電灯は木の向こう側にある窪みというか、少し低くなっている所へと転がって行った。

そのショックだろうか、懐中電灯はチカチカと点滅を繰り返した後に点かなくなった。

とっさに掴んで転ばないように掴んだ木に、俺は何か違和感を感じた。

硬いはずの木の表面が雨の翌日だからか、しっとりと濡れていて、繊維状の何かに触れたような感触だった。

それは多分、木の表皮がめくれて内側から出てきた繊維か何かだろう。

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