優しい彼の正体
投稿者:太山みせる (35)
「俺の彼女がいるのは知らなかったってさ、俺が子供好きだから気軽に預けちゃった、ごめんね、と言ってたよ。彼女に悪いからすぐ帰るって。それから子供が悪いことした時に確かに叩いたことはあるって!でも反省してると言ってたよ」
それから1時間くらいして、優一の友達夫婦が再びやって来て、謝りながら子供を連れて帰ろうとした
「初対面で申し訳ございませんが、お子さんを叩かないで下さいね!」
真弓の言葉に夫婦は「はい」と答えた
そのまま子供を連れて行こうとするも、子供は足を止めて振り返り、真弓を見上げた
「うん?どうしたの?」
一郎は何か言いたそうな顔だったが、問いには答えず、無言で真弓の服をつかんだ
だが次の瞬間、母親に引っ張られてしまった
「お邪魔しましたー」
そう言って3人は帰っていった
※※※
優一の家から帰った真弓はモヤモヤしていた
アザがたくさんあると訴えたのに、転んだり、ぶつけたりしただけどよ、と長らく彼は友達を庇っていた
友達が大事なのは分かるが、子供好きを公言しているなら、もうちょっと子供を心配してもよいのではないか?
また何度か預かったという割には、一郎は始終オドオドしていた
真弓と話をしていても、チラチラと優一を見ていて、まるで彼の顔色を窺っているようだった
優一からは、その後の電話で
「やはり虐待だったかも、もうしないように俺からも伝えといたから」
と言われたが、何となく取り繕っているような気がした
それまでの彼の優しさまでが、わざとらしく感じられてきた
真弓は悩んだ末に、児童相談所に連絡をした
その後も優一とは会ったが、彼は相変わらず優しいままだった
そして何度か会ううちに、疑ったことなど忘れかけていった
そんなある日、一郎の両親と優一が逮捕された
子供の様子がおかしく虐待ではないかと通報されて、出向いた警察官が見たのは、裸の子供をいたぶっている両親とその友達の姿だった
友達は3人、そのうちの1人が優一だった
彼らは同じ嗜好を持っていて、虐待は何度もあったらしい
類は友を呼ぶ?
警察に通報して、保護され本当に良かった。