バスケットボールの謎
投稿者:皐月 (31)
去年の話です。私は、中学の頃の同窓会に参加しました。久しぶりに会う友人は、みんな老けていて、お互いにオバサンやオジサンになったと笑い合っていました。お酒も進み、全員がリラックスした頃。ある話題で盛り上がりました。
それは、誰もいないはずの体育館に、なぜかバスケットボールが無数に転がっていたというものでした。誰かのイタズラだろうと、たいして気にもとめなかったのですが、誰かがふざけてオカルト話にしたのです。
きっと、バスケがしたくてできないまま亡くなった人が、夜な夜なバスケをしていたとか、バスケ部員のあまりの扱いのひどさに、バスケットボールが怒って暴れたとか、ホラーなんだかコメディなんだかわからない内容に、私達は怖がったり笑ったりしたものです。
と、不意に仲が良かったW君が、真っ青な顔をして席を立ったんです。もしかして気分でも悪いのかと追いかけると、彼は居酒屋の外でタバコを吸っていました。
どうしたのかと話を聞くと、彼は小さな声で、「やっぱり、そうなのかな」と言うのです。何が?と聞くと、彼は誰にも言うなよと前置きしてから話し始めました。
中三の頃。彼はバスケ部を引退して受験勉強に励んでいたそうです。その日は図書室で勉強していて帰りが遅くなったため、玄関への近道として体育館の前を通ったんです。
「2人、いや3人かな。バスケをしている声がしたんだ。それで、てっきり部員が残っているんだと思って中に入ったら、誰もいないんだよ。ただ、ゴールポストの下に無数のボールが転がっているだけなんだ」
と、言うのです。奥にドアはあるものの、きちんと施錠されていたし、隠れられそうな場所にも誰もいなく、W君は呆然と立ち尽くしたそうです。
「何度も、誰かのイタズラだと思うようにしたんだけど、ダメたった。どう考えても無理なんだ」
私は、当時の光景を思いだし、ちょっとゾクッときました。
では、あの時のバスケットボールを転がしたのは、一体誰だったのでしょう。
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