不幸を呼ぶ十字架
投稿者:海堂 いなほ (14)
「私の祖父は、戦傷を負って、病院に送られ、そのまま、終戦を迎えました。あのまま、もし、戦傷を負わなかったら、部隊と一緒に死んでいたと祖父から聞かされました。」
私は、祖父から聞いた戦争の話を思い出しました。
祖父は、酒に酔うと大体この話をし、その中に、外国人を助けたという話もあった気がする。思い出せない。
すると、突然店長が、机をたたき立ち上がった。
「ど、どうしたんすか、店長、やめてください。」
急に店長が大きい音を出したおかげで、周りの注目を浴びることになって、すごく恥ずかしい思いをした。
「この十字架は、怪我で人をピンチから救う奇跡の十字架に違いない。」
「いやいや、私とおじいちゃん以外、誰も幸せになっていないっすよ。」
「確かに、俺もけがをしていない。」
すると、リヴァイさんが、口を開いた。
「この十字架は、あなたに会いたかったようです。私にはわかります。だから、十字架が売れてもすぐにあなたの店に戻ってきたと言うわけです。」
妙に納得させられるリヴァイさんの言葉に、私は、うなずいた。そこへすかさず、店長がすべてをぶち壊す一言を放った。
「お前、この十字架、買え。」
私に言ってきたのだ。店長に言わせると店の売り上げを下げる不幸の十字架だからこそ、今こそ、損失をカバーしようと考えているせこい。せこすぎだろう。
私は、十字架を買わず、そのまま、家に持ち帰った。以来、リヴァイさんとは、頻繁に連絡を取り合う中となった。そして、店長は、毎日、私に代金の請求をするようになったのである。
国を越えてご縁が繋がりましたね。
とても感動しました。
そして、罰当たりな金の亡者にはいずれ何かしらの報いがありそうですね
怪談というよりも、歴史もの的な感じでとてもいい味のある小説になっている気がします。このお店を舞台にしたシリーズものが作れそうで、なんだかつづきを期待しちゃいます。
kamaです。ほんと怪談初心者さんという名前には似つかわしくないほどの話のうまさ。すごくおもしろいです。