視える叔母さん
投稿者:とくのしん (65)
「占ったときにね、こういう結果が視えていたのよ」
「じゃ、スーパーに行ったのも・・・」
「そ、貴子さんを助けたかったの。あの常連客の男ね、結構あっちこっちに女作っていたみたいだったからね。そういうくだらない男に引っかかって死ぬほど馬鹿らしいことはないじゃない。でも、貴子さんプライド高かったから自分が引くなんて許せなかったのでしょうね」
「話だけ聞くと叔母さんが行ったせいで事故にあったように思えるけど違うの?」
「私が視えたのはお店の人に止められて、事務所に連れて行かれそうになったときに逃げ出して轢かれたところが視えたの。結果は同じだったけどね。結局、貴子さんが思いとどまるしか助かる道は無かったのよ」
「それでその男は?」
「貴子さんのバッグから遺書めいたものが出てきたそうよ。私もそこまでは視えなかったけどね。まぁあそこで事故に遭わなくても死ぬつもりだったんでしょうね貴子さん。彼に迷惑かけて振り向いて欲しかったんでしょうけど、それが叶わないことは彼女はわかっていたはず。それで遺書みたいなものがきっかけで男は家庭も会社も追われたって話よ。なかなか気前のいい客だったから、常連客を一人失ってちょっと残念だったけど(笑)あんたも女心は弄んじゃダメよ。女は怖いんだから。気をつけなさい~」
高島礼子はタバコの煙をフ~ッと俺に吹きかけて笑っていた。
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■夢の結末
俺の職場に木田という男がいた。木田は寡黙で目立たないヤツで、職場ではほとんど喋らない。そんなヤツとは忘年会で隣になったことから話すようになった。お互い趣味がバイクということで、話のノリがあった。それからちょくちょく休みを合わせてはツーリングに行くことが多くなった。泊まりがけでいくような仲にもなった。木田は言った。
「今まで友達らしい友達なんていなかったから、こういう遅れた青春めいたことができれ本当に嬉しいんだよ」
そんな木田に叔母の高島礼子のことを話した。ちょっとした変わり者だから普段はあまり人に高島礼子のことは言わない。木田に言ったのは俺も木田を親友のように思っていたからだ。占いがよく当たるという話を聞いて、木田は高島礼子に興味を持った。会ってみたいというので木田を高島礼子のスナックに連れて行ったとき、木田を気に入ったのか高島礼子は自分から占いを申し出た。
「過去に纏わるもの・・・夢とかそういうものをよく見ない?」
高島礼子の一言に木田は驚いた表情で頷いた。
「何となくだけど、同じ夢をよく見るでしょ?同じ?いや、少しづつ場面が変わったりそんな感じじゃない?」
高島礼子の問いに木田は静かに口を開いた。
「あの、その通りです。昔住んでいたところなんですけど、丘の上に公園があって。そこでよく遊んだんですけど、そこから段々と自分の家に向かっていくんです。毎日じゃないけど、夢を見る度に家に近づいてくるんです。これって何かの暗示ですかね?」
木田の返しに高島礼子はタバコを吹かしながら考えこんだ。
「あまりよくない夢かもしれないっていうのは何となくわかるのよね。もし見たくないなら枕の位置を変えてごらんなさい。それで見なくなるかもしれないから」
枕の位置で何か変わるのか?俺はそう思ったが、黙っていた。
木田が帰ったあと、高島礼子は俺に言った。
「あの子、人に話せない過去があるわよ」
高島礼子には何か見えているようだった。
それから数か月、何事もなく過ぎた。俺は仕事が忙しくて高島礼子には会ってなかったし、木田の占いのことなんてすっかり忘れていた。けどそんな折、何かの拍子で木田と夢の話になったんだ。
「そういや、木田の夢ってどうなった?枕がどうとか言ってたよな、うちの叔母がさ」
「あーあれ?今でも見てるよ」
「マジ?それでどうなった?」
「実はさ、もうすぐ自分が昔住んでいた家に辿り着きそうなんだよ」
「マジか!まだ続いていたのか」
「でもさ・・・この先を見ていいのかどうか、俺凄く迷っているんだよ」
何か見てはいけないものを見る予感があったのか、木田は俯きながらそう答えた。
木田さん可哀想(T . T)
叔母さんも見え過ぎちゃうのは辛いですね
両親を殺害したのが育ててくれ虐待してた叔父さんとは複雑で、私だったら許せるだろうか考えさせられる話しでした。
木田くんとおじはどこへ行ってしまったのか
怖いというか、めちゃくちゃ面白かった。
高島礼子シリーズもっと読みたいですw