タイ旅行の時に聞いた恐ろしい話

すると男は少し思い出すように天井を眺めてから、おもむろにしゃべりだした。

｢実はな、昨日の夜なんやけどな。
こっちの知り合いに誘われて、変わったところに行ってきたんや……
い、痛！痛たた！おい、もうちょい、優しくせえよ！｣

男の足元にいる浅黒い女が慌てて頭を下げる。

｢まあ、兄ちゃんのような真面目そうな人はどうかなあ……つまらんかもしれんね｣
と言いながら男はちらりと、僕を見る。

｢え！どんなところだったんですか？｣

そんな風に言われると、気になるのが人情であろう。

｢最初、わしもどんなところか聞かされずに連れて行かれたんやけどな。
行ってみると、ちょっとしたアメリカンバーみたいなところでな。
広々したウッド調の店内奥には高いカウンターがあって高い丸テーブルがポツポツあってなあ、椅子は一個もあらへん。
まあ日本で言うたら、立呑屋みたいなもんかな。
一杯飲むごとに金を払うアメリカンスタイルで、なんや昔のロックとかがガンガン鳴っててな
ダーツとかもあったと思う。
お客さんはまあまあやったなあ……

しばらくは連れとカウンターでワイワイ話しながらまあ楽しかったんやけど女もおらんし、だんだん退屈してきてな。
おい、もう帰ろうか？

なんて、連れに言ったんよ。
そしたら、そいつ、なぜかニヤリと笑ってね。
こっちに来いと勝手に歩き出したんで、ついていったんや。

そいつ、どんどん店の奥の方に進んでいくわけよ。
分からんけどとりあえず付いていくと片隅の薄暗いところに小さな裏口みたいのがあってな、そこから中に入ったら、いきなり白い仕切りカーテンがあったんや。
その前に浅黒い肌の現地の男が立っててな。
連れの男がそいつに何やら耳打ちすると、財布から金を出して手渡したんや。
2,000バーツやったかな……。
日本円で6,000円くらいかな。
一人3,000円というところや。
そしたら、その男がカーテンを開き中に入れ、と手招きしたんよ。