深夜の乗客

夏の3代力作。二夜目

「深夜の乗客」

僕のはとこであるK兄から聞いた話。

K兄には、結婚真近の人。(Sさん)がいて、その時は、Sさんと同居していたそうです。しかし、結婚式の4日前。その日はK兄の仕事が忙しく、会社を出たのは夜の10時頃だったとの事。
早く家に帰るため、その日はいつもとは違う道を通ったらしいのですが、その道は明かりもなく、交通量も少ない。そして何より樹海を突っ切ったような道なのでこの時間帯は、ほとんど車が通りません。
そこを抜けるのには、20分程かかるのですが、いつも通る道よりも、15分程短縮できる。と言うことで、その日はそこの道を通ることにしたそうです。しかし、樹海の道に差し掛かって5分くらい走った時、

「ピロン♪この先、およそ300m先。左方向です。」

突然車のカーナビが反応します。

「あれ？当たったかな？」

K兄はナビを解除しようと手を伸ばしたその時、

「ピー。ピー。」

突然、シートベルトを閉めていない時になる音がなります。
シートベルトは閉めたはずなのにな。と思って見てみると、
シートベルトを閉めていないことを知らせるランプは、助手席の方が赤く光っているんです。
何かの誤作動か？と思ったその時、

「この先。左方向です。」

またカーナビが作動します。確かに、左に道はあるのですが、そっちに行っても、大きな湖があるだけで、他に何もありません。
少し気持ち悪いなー。と思っていたその時、
グイッ
自分の握っているハンドルが急に左に傾きます。ハンドルが走行中に、少しだけ左右するのは当たり前なのですが、今のは明らかに、誰かが隣からハンドルを左に曲げたような感じだったんです。左にある道を通り過ぎたその時、

グイッ グイッ グイッ

何度もハンドルを傾けられます。しかし、助手席には誰もいない。
しかし、赤いランプはまだ助手席のところに付いているし、シートベルトをしてないことを知らせる、
ピー。ピー。
という音はまだなり続けています。

「やめろ！これは俺の車だ！」