どくどく
投稿者:人知れず (5)
これは俺の母がある宗教団体に入った時の話だ。母は疑いなくなんでも信じる性格をしていて宗教に入ったときもなんとなくそうなるような気がしていたので特に驚きもなく受け入れた。ただやはりどうにかお金だけは守ろうと家族で協力して母にあまりお金を持たせないようにしていた。そんな中母が変なことを言い始めた。
なんでも人には定められた運命があり、それに逆らうと”どくどく”と言うわけのわからんものが来ると言うのだ。俺たちはすっかり母に呆れながらもなんとなく母のことを受け入れていた。
しばらくして母は俺たち家族は高明な僧侶の子孫であり、母の信仰する宗教に入りその道を極めなければならないと言い始めた。俺は全力で拒否したし、他の家族も嫌がって誰一人としてその宗教に入らなかった。その頃だろうか母はおかしくなった。急に笑い始めたり、かと思えば泣き始めたりとにかくおかしかった。俺たちは母がその宗教に行くことを禁じた。
ある日母がいなくなった。俺たちは必死で探したが、母は見つからなかった。
5年ほど経ち俺は新しい彼女も出来、母がいないことを気にかけながらもそれなりに楽しくやっていた。その頃から母が”どくどく”になった夢を見始めた。母が母ではない何かに変わるのだ。その何かが”どくどく”であるとなぜか俺は直感的に分かった
。気味は悪かったが、特に気にしないように振る舞っていた。
”どくどく”がありとあらゆるところで見えるようになった。いよいよおしまいだと思った。悲しかった、泣きそうだった。しかし、”どくどく”はなにもしてこなかった。だんだんと”どくどく”のことを気にしなくなった。そして、俺と彼女が結婚し、待望の第一子が生まれた時、急に”どくどく”が現れて赤ちゃんを連れ去ってしまった。赤ちゃんをすぐに探したが、赤ちゃんは見つからなかった。俺は母について探偵を雇って調べることにした。
そして、母が元々妊娠出来なくなる病気を患っていたこと、なのに母は奇跡を起こし俺を妊娠したことを突き止めた。そして、その奇跡は母が入っていた宗教団体の教祖によって引き起こされたものであると母は信じていたのだろうということだった。俺は正直驚いた。なぜなら母があの宗教団体と俺が生まれる前から関わっていたということになるからだ。少なくとも俺が小さいときは母は宗教には入っていなかった気がしていた。
俺は探偵に宗教団体のことも調べてもらうように頼んだが断られた。仕方なく自分で調べることにした。
まず、その宗教団体の本部に行った。しかし、そこには跡地があるだけだった。仕方なく跡地の内部を見てみることにした。しばらく探検していると、どうやら母のものと見られる手紙を発見した。驚いた。そこには大雑把に次のことが書かれていた。
•俺は教祖様が母の熱心なご奉仕に感激し、運命をねじ曲げて作られた子供であること
•母は運命をねじ曲げる代償によって”どくどく”になること
•俺は元々いない存在なので子供を作ったり、世の人たちの記憶に必要以上に残ること(大事件を起こす、ノーベル賞をとる)などすると、”どくどく”に消されてしまうこと
•俺と関わり必要以上に俺に影響された人間も”どくどく”に消される可能性があること
•母は必死に俺が幸福に生きていけるように教祖様に頼んだが無理だったこと
俺は半信半疑だった。しかし、なんだか受け入れていた。”どくどく”はどう考えてもこの世界のものではなかったからだ。それから俺は彼女と離婚し、一人で生きていくことにした。彼女が消えるのは嫌だった。
俺は普通の人がとてつもなく羨ましい。
めちゃくちゃ嫌な話
おれは自分の母ちゃんを大事にするよ
運命は変えられないのかな?
洗脳されていますよ。
運命は自分かで変えないと。
「ドクドク」の音にドキドキしちゃいました。