ストーカーはいつも近くにいる【partⅡ】

｢お姉ちゃん、なんだか私の行動、筒抜けみたいなのよ｣

東京で一人暮らしをしている今年２９歳になる妹からライン電話があったのは、昨晩のことだ。

どうやら最近元カレによるストーカー被害を受けているみたいということだった。

私は尋ねた。

｢筒抜けって、いったい、どういうことよ？｣

｢あのね、先日夜仕事から帰った時アパートの集合ポストを覗くと変な白い封筒が入っててね。
宛名を見ると、なんと去年別れた篤志からのもので、中の便箋には、最近お前ちゃんと晩飯食べてるのか？インスタントじゃあ栄養つかないぞって書かれてて、、、
確かに私、その日の前日の晩御飯は疲れていたからカップ麺だったのよ。
それまでも無言電話とかはあったんだけど、今回のはさすがに度を越してると思ってね。
あいつ、私の部屋に監視カメラとか仕掛けてるのかな？

それともまさか天井裏に潜んでいるとか？
ああ、気持ち悪い、気持ち悪い。
お姉ちゃん、私どうしたらいいのかな？｣

妹の元カレは板前だったそうなのだが、異常に嫉妬深くて短気な性格だったようで、普段から妹との間で痴話喧嘩が絶えなかったらしい。
しかも３年ほど前、当時勤めていた料亭の女将と口論のあげく包丁で大怪我を負わせ、しばらく刑務所に入っていたこともあったそうだ。

そんなこともあって去年の始め、最終的には別れたそうなのだが、それからもちょくちょく連絡があって復縁を迫られていたようだ。

｢弘毅さんには相談した？｣

弘毅さんというのは、妹の新しい彼氏だ。

最近お付き合いしだしたようで、私はまだ会ったことがない。

とても優しい彼氏らしく、妹が仕事で疲れている時とかは代わりに掃除とか晩御飯の準備とかまでしてくれたりするそうだ。

｢うん、昨日うちに来た時、話した。
そしたら、今度一緒に警察署に相談に行こうって言ってくれた｣

｢それが良いと思うよ｣

すると最後に妹はこう言った。

｢ねぇ、お姉ちゃん、他にも相談したいことあるから、うち来ない？｣
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ということで私は翌日の日曜日、妹に会いに行くことにした。

東京駅に着いたのは午後５時過ぎ。

それから地下鉄に乗り換え、妹の住むアパート最寄りの駅の改札を出たのは午後５時４０分だった。

約束の時間より少し早く着いた。