地獄の水先案内ピエロ
投稿者:ねこじろう (147)
「首吊りでも、飛び降りでも何でもいいよ。
とにかく死にたいんだよ!」
彼は面倒くさくなって思わず言った。
「なんだ、そんなことでしたら、お兄さんにぴったりの場所があります」
と言ってピエロは意味深に微笑んだ。
「ぴったりの場所?どこだよ、それは?」
サトルが尋ねるとピエロはさっさと彼を抜き去り、背中を向けて正面に立つ。
そして振り向いて肩越しにニヤリと微笑むと片手で手招きした後、颯爽と歩き出した。
次に行く宛もなかったから、彼は格子柄の背中に従って歩き出した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ピエロは大通りから薄暗い路地に入り、軽快に口笛を吹きながらどんどん歩く。
サトルはわけも分からずフラフラと付いていった。
何度か角を曲がって進むと、薄汚れた古い雑居ビルが現れた。
三階建てくらいの小さな灰色のビルで、横には縦型の看板がいくつか並び、妖しく光を放っている。
「ここですよ」
そう言ってピエロは白い手袋の手で指さす。
エントランスの上のアーチ型看板には、『Happy Gate』という文字が書かれている。
玄関口前はあちこちゴミが散らばり、一匹の黒い野良猫がガツガツと漁っていた。
入口横側には地下に通じる階段があり、ピエロは口笛を吹きながらそこをテンポ良く降りだした。
わけも分からずサトルも一緒に降りる。
10歩ほど降りたところに小さな踊り場があり、映画のチケット売り場のようなところがあった。
透明のボードの向こうに、青い事務服の地味な女が座っている。
「男性1名、お願いしますね」
ピエロが女に言うと、女は無愛想に「一万円」と答えた。
彼はサトルの顔を見て、「一万円です」と言う。
―なんだと一万円?えらく高いじゃないか。
と一瞬思ったのだが、気分はもうどうでもいいやとなっていたから財布から出すと素直に渡した。
すると売り場の横の鉄の扉がカチャリと開く。
サトルはピエロの後に続いて中に入った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
嫌な事ばかり続くと、やっぱりへこむ。
怖い
死を体験できる映画館みたい。
使い方によっては自殺防止の教材になりそう