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不思議体験

ねこじろうさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

黒電話
長編 2023/04/22 10:56 10,745view
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新幹線の新神戸駅に着いたのは、
ちょうど午後4時。

それから私鉄のローカル線に乗り換えて椅子に座って窓から海を見たとき、ダムが決壊するかのようにどっと疲れが押し寄せた。

電車の規則的な心地よい揺れと襲い来る睡魔で、いつの間にかうつらうつらと首を上下にしだしたときだ。

─ゴトン、、、

金属のぶつかり合う鈍い音がして、車両が大きく揺れた。

次の瞬間、車内が停電にでもなったかのように真っ暗になった。

それから車両は徐々に速度を落としていく。

─事故でもあったのかな?

振り返って窓から外を覗いたとき思わず「あ!」と、声がでた。

四角い窓は全て白い霧で覆いつくされていて、さっきまで見えていた海岸線がきれいさっぱり消えている。

「一体、これはどういうことだ?」

混乱した状態で椅子に座っていると再び車両は大きく揺れ、やがて停止した。

と同時に、大きな抜ける空気音とともに乗降ドアがゆっくりと開いていく。

アナウンスも何もなく、静寂だけが車内を支配していた。

立ち上がり、入口のところまで歩き、そっと外を覗いてみる。

そこは小さなプラットホームだった。

全長は僅か10メートルほどの本当に小さなプラットホームを、白い霧が蛇のようにうねうね漂っている。

見上げると空は不気味な黄金色の雲に覆われていた。

恐々ホームに降り立つと、ゆっくり歩きだした。

左手に階段があったので下に降りると、正面に小さな改札口がある。

自動改札ではなく昔ながらの改札だ。

だが人の気配はない。

改札を抜けると霧の漂う狭い道が左右に走っていたので、何となく右側の方を歩きだした。

白い霧のうねる細い路地の両側は、背丈ほどの垣根が続いている。

しばらく歩くと道は行き止まりになり、左手には四角い電話ボックスが怪しい光を放っていた。

ふと反対側に目をやると垣根越しに、大きな柿の木があった。

なぜだか懐かしい気分になったので、その柿の木のそばまで歩き、その立派な枝ぶりを眺め葉っぱを触っていると、垣根の向こう側から人の声が聞こえてくる。

枝越しに覗き込んだとき、思わず「あ!」と声をだした。

そこには昔ながらの庭木が広がり、その先には古い日本家屋の縁側があった。

3/5
コメント(1)
  • 泣きそうなラスト。切ない。

    2023/07/04/16:10

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