営業先の病院で
投稿者:ぎゅぅっ (11)
これは私が社会人になってからの話です。
私は医療関係の営業として就職しました。
3年目のある日のことです。私は病院で打ち合わせ後、商品の納品をする予定でした。病院の業務が終わった19時ごろから打ち合わせを行いました。
多少規模の大きな案件であったこともあり、打ち合わせに時間がかかり、打ち合わせ自体が終わったのが22時過ぎになりました。
私は打ち合わせ後、病院のスタッフに許可をとり納品を行おうと商品を持って納品予定場所の病棟の5階にエレベーターで向かいました。
商品の納品を終わらせ、時計を見ると23時前になっていました。既に消灯時間になっており、病棟は薄暗い少し嫌な雰囲気になっていました。
私は早く帰ろうとエレベーターのほうへ向かいました。エレベーターが見えてきたとき、私はエレベーターの階数表示の数字が上に上がってきているのに気づきました。
私は誰かがエレベーターを呼んだのだと思いました。しかし、次の瞬間私は背筋が凍るような感覚を覚えました。
エレベーターが私の見えている5階で止まったのです。そして、エレベーターの扉はゆっくり開きました。もちろん、私の周りに人などいませんでしたし、呼び出しのボタンが押されていたようなこともありません。
そして、私はある違和感に気づきました。エレベーターの扉が開いたとき、エレベーターの中の灯りが全くついていなかったのです。このエレベーターは私も何度も使用したことがありますが、扉が開くときに真っ暗ということはあり得ないのです。
少しするとエレベーターの扉は閉まり、下の階へと動いていったのです。
私はとっさにこのエレベーターに乗ってはいけないと感じ、非常階段の方へと向かいました。一刻も早く病院から出ようと、慌てて非常階段の扉を開け、階段を駆け下りました。
3階あたりにたどり着いたときでしょうか。私のものとは違う足音が聞こえました。まるで私を追いかけてくるように、上の階から足音がどんどん近づいてきます。
一瞬病院のスタッフかもと思いましたが、足音が近づいてくる速度が異常に早かったため、私は必死に逃げました。
1階まで降りて、病院の時間外出口が見えました。私は走り、警備員さんの姿が見えたため、走る速度を緩めました。
そして、警備員さんに軽く挨拶をして病院を出ました。
私は安堵して駐車場の自分の車の方へ向かおうとしたときです。背後から首元を引っ張られるような感覚を覚えました。まるで病院へと引き戻されるように。
私は振り返ってはいけないような気がして、また走って車に乗り病院をあとにしました。
それ以降もその病院には訪問していますが、そのような経験は一度きりです。
結局今もあの事象がなんだったのか分からないままです。
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