不気味な同棲
投稿者:ねこじろう (147)
私は緊張した面持ちでゆっくりその向こうへ視線を移す。
途端に全身が凍りついた。
磨りガラスの向こう。
そこに、
ボンヤリとした人影が見える
それはあたかも天井から誰かに糸で操られている人形のように、ゆっくりカクカクと不自然に首や手足を動かしている。
時折首が胴体から離れたり、手足があり得ない角度に曲がったりもしていた。
そう例えていえば、昔縁日で観た影絵のような、、、
次々に込み上げてくる恐怖と戦いながら私は頑張って声をかける。
「涼太?」
すると間もなくキュッという蛇口を閉める音がし、突然流水音が途切れた。
一瞬で室内は静寂に包まれ、次にはガタガタという扉を開こうとする音が続く。
「ひ!」
私は小さな悲鳴をあげ、慌てて洗面所のドアを閉めると急いでリビングに入り、元いた席に座る。
「どうしたの顔色悪いけど、大丈夫?」
心配げにM代が尋ねる。
私は喋ることが出来ず、ただじっとうつむいていた。
すると、
「あ、涼太」
M代が嬉しそうにリビング入口に目をやった。
え!?
驚いた私は振り返り、背後のドアに視線を移す。
開きつつあるドア向こうの暗闇に、白っぽいガウンを羽織った茶髪の男が立っているのが見えた。
私は慌ててまた前を向くと、恐怖でそのまま固まってしまう。
ガタリとドアが開く音がしたかと思うと、フワッと空気が動いて気配が近づき、隣の椅子がすっと引かれる。
微かに鼻をくすぐる生臭い匂い。
私はひたすら前を見続け隣の様子が視界に入らないように頑張っていたが、一瞬奇妙なものが視界の端に入りゾクリとした
それはテーブルに無造作に置かれた、肘から先の大人の腕。
青白くて筋張っていて半分腐りかけている。
「ひっ」
え?彼氏生きてんの?
無敵じゃん。電車に勝つとかスゴいな
とんでもない世界に入り込んでしまったような怖さがありました。
よかったじゃん。彼氏生きてて。
まぁ、俺も全身バラバラになる程度じゃ死なないからなー。