不気味な同棲
投稿者:ねこじろう (147)
「そんなとこに立ってないで、そこに座って」
と正面の席を薦めるので、言われるとおり座った。
目の前には取り皿や小鉢、グラスが一揃いある。
グラスには既にビールが注がれていた。
テーブルの真ん中辺りにはカセットコンロが置かれていて、その上に土鍋が乗っている。
火は未だ点いてなかった。
「久しぶりね」
そう言ってM代はひきつったような笑みを浮かべた。
2つの目が違う方を向いているのが不自然だ。
目の下にはくっきりと青い隈があった。
私は無理やり笑みを作りながら「そうね、本当に久しぶりね」と答えた。
そしてしばらく私たちはビールを飲みながら、当たり障りのない話をしていた。
すると話の途中唐突にM代が「あのね、今あの人シャワー浴びてるから、上がるまで鍋に具材を入れるの待ってね」と言い、土鍋の横に置かれた大皿に盛られた肉や野菜をチラリと見る。
「あの人って?」
恐る恐る私は尋ねた。
そしたら彼女は、
「なに言ってるのよ、涼太に決まってるじゃないの」と言って、またひきつったような奇妙な笑みを浮かべた。
相変わらず2つの目は私ではなく違う方を向いている。
ゾクリと背筋に冷たいものが走った。
私は思わず振り返ると、開け放たれたリビングのドアの向こうに目をやった。
薄暗い廊下沿いにある洗面所のドアは少し開き、そこから灯りが漏れていて、微かに流水音が聞こえてくる。
私が精一杯平静を装いながら「り、涼太ここにいるの?」と言うと、M代は「そう、あなたが来る5分くらい前に帰ってきてね、先にシャワー浴びるって言って浴室に入ったの」と当たり前のように言う。
気分の悪くなった私は「ちょっとお手洗い借りるよ」と言って立ち上がり廊下に出ると、リビングのドアを閉じる。
そしてトイレの前で軽く深呼吸をした後、隣にある部屋の前に立った。
少し開いている扉の隙間からはボウッと灯りが漏れていて、相変わらず流水音が漏れ聞こえてきている。
シャー――――――、、、
私は緊張しながら、そっと中を覗いた。
脱衣所の電気は消されているが、奥にある浴室入口の磨りガラスドアから漏れる明かりが、床の様をあからさまにしている。
見ると、男物の下着や洋服が乱暴に脱ぎ捨てられていた。
え?彼氏生きてんの?
無敵じゃん。電車に勝つとかスゴいな
とんでもない世界に入り込んでしまったような怖さがありました。
よかったじゃん。彼氏生きてて。
まぁ、俺も全身バラバラになる程度じゃ死なないからなー。