悪霊に憑りつかれた会社の同僚

「どうしたもこうしたも！二日間も無断欠勤してどうしたんですか！？」私が怒鳴る様に言うと、「え？無断欠勤？今日日曜日じゃないのか？」とチンプンカンプンな様子でした。

相変わらず生気のない佐々木さんに二日間の出来事を教えると、とても驚いた様子で「俺飲み会行った事は覚えてるけど、その後の事があんまり思い出せない……」と言いました。

どうやら佐々木さんは日曜日から今までの事をあまり思い出せないらしく、携帯に残った大量の着信履歴にも相当驚いていました。
そして二日間の無断欠勤を私に謝罪し、急に思い出したかの様に「……そうだ！リカ（仮称・以下略）！リカどこ行った！？」と言いだしました。

リカというのは佐々木さんの彼女の名前らしく、部屋中を慌ただしく探し始めました。
同棲はしていなかったみたいですが、最後に記憶に残っている限り確かに一緒にいた様でした。

「自分の家に帰ったんじゃないですか？」と私が言うと「でも携帯にも一切連絡来てないし……」佐々木さんは大慌てで彼女の携帯に電話をかけました。

しかし一向に繋がらず、佐々木さんはパニック状態に。
「一旦落ち着いて冷静になりましょう」私はそう言い、続けて「そいえば心スポ行くって言ってましたよね？」と言いました。

すると佐々木さんは何かを思い出したかのような表情を見せた後、急に突然発狂してベッドの上で転げまわりました。

「リカ～！！リカ～！！」と大声で叫んでベッドの上で白目をむきながらジタバタともがく佐々木さん。

突然の異常事態にどうしていいか分からなくなった私は、一旦部屋の外に出て社長に助けを乞いました。
部屋の外にいても聞こえてくる佐々木さんの叫び声。

社長に詳しく事情を説明すると、「相当ヤバそうだな。今から”プロ”連れて行くから少し待ってろ」と社長に言われ、最初は部屋の外で待っていましたが、部屋の中から「ガシャーンッ！」とものすごい音が聞こえてきたので、大慌てで部屋の中に入りました。

「大丈夫ですか！？」と部屋の中に入った私の目に飛び込んできたのは、一心不乱に部屋中の物を投げ飛ばしている佐々木さんの姿でした。
本や書類など手当たり次第に近くの物を投げ飛ばしていた佐々木さんは、明らかに普段と違う人物に見えました。

上手くは言えませんが、佐々木さんの身体をした違う人物がそこにいる様に見えたのです。

そしてついにはテレビをひっくり返し、棚を倒し始めた佐々木さんの顔を見ると瞳孔が完全に開き切り、ヨダレを垂れ流して完全にいつもの佐々木さんじゃありませんでした。

さすがにマズいと思った私は必死に佐々木さんを取り押さえようとしましたが、とんでもなく力が強い佐々木さんは軽々と私を吹き飛ばし、止める事が出来なかったので自分の身の危険を感じた私は部屋の外に避難しました。

するとしばらくすると部屋の中が静かになり、次は「リカ～！！リカ～！！」と叫びながら佐々木さんの泣き声が聞えてきました。

部屋の中から響きわたる悲痛な泣き声を聞きながら待っていると社長が到着し、「大丈夫か？」と私に声をかけてきました。
そして社長の傍らには見知らぬ人物が。

「相当ヤバいのに憑かれてんなこりゃ」と顔をしかめていたイカつい雰囲気の人物は社長の言っていた”プロ”の方でした。

「ちょっと待っててくれ」と言って部屋の中にプロの方は入っていくと、しばらくの間沈黙が続き、突然「ぎゃあぁぁぁー！！」と言う佐々木さんのとんでもない叫び声が聞えてきました。

断末魔にも聞こえたその叫び声に心配になり、思わず部屋の中に入ろうとした私を制止した社長は「行っても邪魔になるだけだ。大丈夫だから」と言って私の肩をポンと叩きました。

そしてしばらくすると部屋の中が静かになり、中から”プロ”の方が出てきて「ふぅ～ヤバいヤバい。しばらくの間様子見だな」と言い、私が佐々木さんの彼女も連絡が付かない事をその人に伝えると「その彼女も同じ様な感じだな。急いで祓いに行かないとな」と言って、彼女の住所を調べる様に社長に言いました。

その後、佐々木さんと同じく自宅で何かを呟きながら虚ろな表情を浮かべていた状態で発見された佐々木さんの彼女もその人にお祓いをしてもらい、何とか事なきを得ました。

その”プロ”の方曰く、佐々木さんと彼女は心霊スポットで”相当ヤバい霊”に憑りつかれてしまったらしく放っておくと命を落としていただろうと言いました。

寸での所で何とか救われた佐々木さんと彼女は、後日社長と”プロ”の方にお礼と謝罪をしに行き、佐々木さんは仕事にも復帰してきました。

ホラー映画などでよく見る憑りつかれた人間の姿を初めて目の当たりにした私は、改めて心霊スポットなんて行くものじゃないとしみじみ思いました。