友達が送ってきた廃墟巡りの動画
投稿者:N (13)
やられた。
逆光とか明るさを利用した演出を仕掛けるとはAも中々やりおる。
だが、その影は調光がちょうどいい具合になるとふっと消えてしまった。
恐らくこれに関しては後で編集したものだろう。
Aはこの部屋を出ると、残る一部屋に向かう。
もう一つの部屋は襖が閉まってた状態だったが、Aが取っ手を持って引くと引っ掛かりも無く開いた。
中は真っ暗だった。
辛うじて廊下側からの日差しで中の床の一部が見えるか見えないかという絶妙な暗さ。
恐らく機材の良し悪しもあるかもしれないが、ほぼ何も見えない状態だった。
『くれーな、ここ』
Aもボソッと呟いてたが、まさか窓が無いわけではないだろうに、どうしてここまで暗いのか俺も疑問に思ってた。
そこでAは思い出したかのようにライトを構える。
数回カチカチと音が聞こえたと思うと、パッと光が放ち、画面が白く飛んだ。
そして、改めて他の色が浮き出ると、部屋の中を映し出す。
そこには画面を睨むようにして佇んでいる数十人という人間が密集して座り込んでいた。
『うわああッ!?おおッ!?』
「うおおおッ!?」
Aの絶叫に共鳴するように俺も叫んだ。
画面も飛び跳ねたようにあっちこっちに小刻みに震えだすが、最早俺がスマホを振ってるのか、Aが手元を震わせてるのか分からない状態だった。
『うわッ!うわッ!わッ…』
Aは声にならない声を発しながら勢いよく階段を下り始めるが、階段下の廊下、その左右の部屋の入口から数人の顔が覗き込んでた。
全員が青白くニタニタと笑ってるように見えたが、Aは『はああああッ!?』とか甲高い声を上げながら盛大に足を踏み外して階段を転げ落ちる。
メキメキ、ドタバタ、ドスンと酷い音がしてたが、カメラが動いてたのでAがすぐに起き上がって走ってるのは分かった。
カメラは床を映していたが、Aは絶叫というか、最早雄叫びに近い声を上げながら『うおおおおおお』と玄関を突き破るようにして外に走っていた。
汚い床から草や土が映り始めて、俺もAが廃墟を脱出した事を悟る。
カメラは一度青天井を映して白飛びしてしまったが、そのまま地面に寝転んだような横から見た構図を収める。
右側に地面、左側に横向きの廃墟が正面から映し出される奇妙な構図。
Aの呼吸音が聞こえるが、俺はそれよりもカメラに映った廃墟に釘付けだった。
少し距離があるからよく見ないと分からないが、家の入口や窓といった吹き抜けの部分全てから人が覗き込んでる様子が映ってた。
しかもそのうちの何人かは妙に細長い腕を「おーい」と言わんばかりに振ってた。
大作ですな
読みやすくて一気読みでした
12ページもあったから読むか迷ったけど読んでよかった
夜中に一気読み!面白かった!
想像してただけで心臓が早く波打つのがわかった。
長いのもあってか結構怖かったわ(笑)