とも子は足が遅いのだ。
女は自分の速度を殺しきれずに曲がり角でかなりの時間をロスするが、それを差し引いても、とも子が少しでも遅れたり、転んだりすると一気に窮地に陥る可能性がある。
それほど直線状での女の足は早く、逆にとも子は亀だった。
そんな時だった。
予め開けておいた三階の渡り廊下を目指して直進していると、突然渡り廊下横の階段の踊り場から女が飛び出してきた。
幸い、私が足が速くて、私の視界には女が私の後ろ髪を掠めていくのが見えた。
間一髪だった私は、渡り廊下まで駆け抜けてから少し振り返る。
そして私は顔を歪ませた。
私の少し後ろにはとも子が走っていた筈だ。
しかし、今、とも子は尻もちをついた状態で震えがっている。
とも子が見上げる先には頭を横に倒し、長い髪を垂らす女が佇んでいる。
女は完全にとも子を標的にして距離を詰めていた。
そんな中、とも子は「あ、あ、あ」と声にならない恐怖を表し、縋るように私の方を見た。
だが、私は翻って逃げ出した。
最低だった。
夢と分かっていても、自分の行動を恥じた。
なんでこの時、とも子を置いて逃げ出したのか、自分でも分からない。
私はとも子を置いて、全力で旧校舎の廊下を突き抜けて一階まで駆け降りた。
その間、かつてない恨みを含んだ悲鳴が校舎に響き渡る。
窓が割れる音もした。
女の不気味な笑い声もした。
それでも私は足を止めずに、旧校舎から校庭に飛び出し、学校という要塞を捨てて外に逃げた。
そこからは自分が何をしているのかも覚えていない。
たまに人とすれ違ったのは微かに覚えているが、私は走り続けた。
そうしている内に気が付くと、私はスッと朝を迎えていた。
初めて女に捕まらずに朝を迎えた事に内心かなり動揺した。
それに、とも子を捨てて逃げた罪悪感から頭が痛くなった。
とも子に会ったら謝ろうと誓ったが、学校で顔を合わせたとも子の顔は無感情を体現したもので、私への敵意とかそういうのを無くしたような、侮蔑した目を向けていた。
「…あ、あの、とも子」
その日からとも子は一言も口を聞いてくれなくなった。
























1本の映画をみた満足感!
↑それな 面白かった映像で見たい
カラダ探しっぽい
クッソ怖くて読みごたえがあって面白かった!