「法王騎士団のルーカ神父とお見受けいたします。・・・あなた方が騎士団を持っているように、我が日本にも封魔専門の部隊がありましてね。まぁ詳しくはお話できませんが・・・申し遅れました。私はこの部隊を指揮する如月(きさらぎ)少佐です。お見知りおきを」
日本刀を鞘にしまいながら男はそう語った。
「より子クン、無事か?」
もう息が絶え絶えのダヴィデの顔のあたりで泣きじゃくるより子に声をかける神父。
「ルーカ神父、あちらの少女、朽屋家のご令嬢はしばらく私が預からせていただきます」
「なんですと? 少佐はなぜ彼女の事をご存じなのか?」
「ご存じも何も、朽屋家は代々陰陽師として天皇家に使えてきた家筋。初代は我が部隊創設にも関わった大恩人でございます。朽屋家の人間はその能力を隔世遺伝させながら、我らと離れたり、合流したりしながら今日まで代を重ねたと伺っております。今代のお嬢様はどうやら我々とともにある素質がおありのようだ」
「もし、断ると言ったら?」
「・・・力づくで・・・と言いたいところですが、ごらんなさい。彼女は今死線をさまよっています。特別な治療が必要だ。我々にお任せ下さい。医療設備もスタッフも揃っています。なに、悪いようにはいたしません。1年ほどしたら学園に元気な姿でお返ししましょう」
「嘘ではないな」
「もちろんです。我々も法王騎士団とは争いたくありませんし、それに、我々の部隊も今回の争いで二人失いました。遊びで言っているのではありませんよ」
そう言いながら、先ほどのアスタロトの矢を受け炎上している教会を眺めるルーカ神父と如月少佐。
朽屋の元にかけより、抱き上げるルーカ神父。
衝撃を受けてボロボロになっていた朽屋の服が破れて、朽屋の背中が見える。
「む?・・・これは・・・」
朽屋の背中には、まるで焼き印のように逆十字が三つ刻印されていた。
ルキフェル・アスタロト・ベールゼブブの呪いの紋章だ。
本来、ダヴィデが受け取るはずだった魔力の源を、朽屋が受け取ってしまった代償だ。
普通の人間ならば死んでしまうほどの魔力を一気に受けて、それでもなお朽屋が生きているのは、生まれながらにして彼女を守っている守護霊の力があったからだ。
ルーカ神父もすべてを見たわけではない。
朽屋の背中には、悪魔たちが刻んだ刻印のほかに、それらを掴むようにして三本の足を広げる八咫烏の姿が映りこんでいた。
「救護班急げ!こちらのお嬢さんを急ぎ収容だ」如月少佐が指示を出している。
ルーカ神父は自分の上着を朽屋にかけて体を保護した。
その間、ダヴィデは今にも息を引き取る寸前となっていた。
「・・・ベアトリーチェ・・・おまえはまだ幼い・・・私が守る・・・」
「お父さん・・・安心して。私もう子供じゃないわ。ルコちゃんや涼君に教えてもらったの。人は成長するんだって。・・・見てて・・・」
より子はイメージ力を強く持った。朽屋瑠子の姿、貴澄涼の姿、いつも見ていた学園の生徒たちの姿。そして、翼を出したの同じように、自分が14歳くらいになった姿を強くイメージし、具現化してみせた。
強く光り輝いた後に現れたのは・・・学園の制服を着て中学生の姿になったより子の姿だった。
「お父さん、見える?私、ホラ、もう小さな子供じゃないのよ」
一瞬驚きの声を上げるダヴィデ「・・・ベアトリーチェなのか・・・こんなに・・・大きく育っていたのか・・・知らなかったよ・・・」
























kamaです。先ほど投稿させていただいた「より子ちゃん」の裏で起きていた一大事件を書かせていただきました。まず先に「より子ちゃん」を読まれてからこちらを読むと、面白さも倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で4作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズも読まれると世界観が広がると思います。
あと、今回27ページもの大長編となってしまいました。頑張って読んでくれた方、ありがとうございます。・・・これだと誰も怪談朗読してくれないだろうから、そのうち自分でやろうかな・・・と思ってます。
まるで吸い込まれるような感じで、最後まで拝読させて戴きました。続きを早く読みたいです。
↑kamaです。27ページもあるのに読んでいただき感謝です。
朽屋瑠子シリーズは今後、短編をいくつか出しつつ、たまに長編みたいな、そんな感じで出して行こうと思ってます。
kamaです。
涼君が押し入れの鉱石採集セットを見つけてより子ちゃんに再開するシーンに、
『ローズクウォーツが抜け落ちた鉱石採集セットのように、
涼の心にもぽっかりと隙間が空いているようだった。』
という一文を追加させてもらいました。
・・・詩的でしょ?
まさに、涼君の鉱石セットのくだりがホロリと来ました。短編物も拝読させて戴きましたが、瑠子シリーズはスリルがあっていつまでも読みたくなります。
↑kamaです。ありがとうございます。どこかホロリとくるシーンがあるのって、いいですよね。怪談は怖い話ばかりじゃないと思いますし。
奇々怪々に「怖いボタン」以外も欲しいです~。
また楽しみにしていてくださいね。
ボクはより子ちゃんが泥だらけになっても涼君を追いかけるとこでホロリと来ました。
より子ちゃん単独の話だけ見ていると、子供の誕生日になぜ教会から出られないより子ちゃんが家まで来たのかわからなかったけど、これでつながりました。
↑kamaです。ありがとうございます。朽屋瑠子シリーズは、ボクの作品の裏で起きてる解決編みたいな構成で、オムニバス的に楽しめるようにしてます。これからもよろしくお願いします。
今まで投稿話の中で27ページという最長の話を投稿されたkama先生お疲れ様です。ところで今回の話も場合によっては改稿などで短くなるでしょうか?
↑kamaです。ありがとうございます。改稿の可能性は無いとは言えませんが、今のところは「やり切った感」が強いので、あったとしてもたぶん1年後とか、あるいは改稿しないか・・・という感じです。そうですね・・・やるとしたら戦争の歴史を説明している部分をもう少しはしょるとか・・・ですかね。でもあの部分もより子ちゃん親子がいかにして生涯を閉じたかの部分なのでバックボーンとしては残しておきたい気もしますし。まぁとりあえず今は次の作品を出すことの方を優先したいと思ってます。ありがとうございます。
色々な方の長編作品を読んでいた際にkana様のクッチャルコシリーズを見つけ、初投稿から読ませていただいているのですがこの話で先に読んでいた作品と繋がってとてもテンション上がりました…!!
本当に楽しく読ませていただいてます!!ファンです!!!